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妊娠カレンダー(小川洋子)

彼は、こんな分かりきったありふれたセリフを、いかにも親切そうに喋る癖があった

そこだけ時間の流れから沈殿したみたいにひそやかなの

二人は傷ついた小鳥のように寄り添い

演技しているようなきれいな泣き方

つわりはずぶ濡れのブラウスのように、じっとり彼女に貼り付いている

甘ったるいおもちゃみたいな言葉「クロワッサン」

「やまぶき色の果肉がガラスの破片みたいに何枚も何枚も薄く重なり合って、シャリシャリ音がする枇杷のシャーベット。枇杷のシャーベットが食べたいの」
「駄目。今じゃなきゃ駄目なの。頭の中が枇杷で一杯なの。息が苦しいくらい。このままじゃ眠れないわ」
「枇杷じゃなきゃ意味がないわ。枇杷の柔らかくてもろい皮とか、金色の産毛とか、淡い香りとかを求めてるの。わたしの中の妊娠が求めてるの。」

わたしは、破壊された姉の赤ん坊に会うために、新生児室に向かって歩き出した
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Hiro

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読んだ本の記録。忘れたくない言葉。

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