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性に眼覚める頃 (室生 犀星)

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「僕が君に力をかしてやるからね。二人分やってくれ。」「僕は一生懸命にやるよ。君の分もね。十年はやり通しに勉強する。」 私はつい昂奮して叫んだ。 二人は日暮れまでこんな話をしていた。間もなく私はこの友に暇を告げてそとへ出た。そとへ出て私は胸が迫って涙を感じた。秋も半ばすぎにこの友は死んだ。


かれは白いような、淋しい微笑を浮べた。それが自分の病気を嘲っているようにも、また私が彼の病気にかかわっていないことを冷笑しているようにも受けとれるのであった。深刻な、いやな微笑であった。

父の立てた茶は温和にしっとりした味いと湯加減の適度とをもって、いつも美しい緑のかぐわしさを湛えていた。それは父の優しい性格がそのまま味い沁みて匂うているようなものであった。


私はいつもあの「おくじ」一本によって人間の運命が決定される馬鹿馬鹿しさ

しずかな家の内部はいかにも彼女の温かい呼吸や、血色のよい桜色した皮膚に彩色せられたように、

彼女のこころよい皮膚の桜色した色合いがしっとりと今心にそそぎ込まれたような満足を感じた

なぜああいう美しい顔をして、ああいう汚いことをしなければならないか


寺へ来る人人は、よく父の道楽が、御燈明を上げることだなどと言っていた。それほど父は高価な菜種油を惜まなかった。父自身も、「お燈明は仏の御馳走だ。」と言っていた。


私は自分の室へかえると、自分の詩が自分の尊敬する雑誌に載ったという事実を今ははっきりと意識することができた。そして、あの雑誌を読む人人はみな私のものに注意しているに違いないと思った。

私は、雑誌をうけとると、すぐ胸がどきどきしだした。本屋から旅館の角をまがって、裏町へ出ると、私はいきなり目次をひろげて見た。いろいろな有名な詩人小説家の名前が一度にあたまへひびいてきて、たださえ慌てている私であるのに、殆んど没書という運命を予期していた私の詩が、それらの有名な詩人連に挟まれて、規律正しい真面目な四角な活字が、しっかりと自分の名前を刷り込んであるのを見たとき、私はかっとなった。血がみな頭へ上ったように、耳がやたらに熱くなるのであった。






「お燈明は仏の御馳走だ。」という言葉がとても新鮮だった。そう考えたことがなかったから。
人間ってさまざまなもの、お金だったり食べ物だったりを仏様にお供えするわけですが、燈明もその一部なのですね。
新しいモノの見方なのでした。

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Hiro

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読んだ本の記録。忘れたくない言葉。

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