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発病 (北条 民雄)

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苦しくともよい、兎に角最後まで卑怯なまねをしたくないのである。苦痛に正面からぶつかつて自分の道を発見したいのである。

かうして私の癩生活は始まつたのだつた。私は十日に一度づつその病院へ通つた。勿論祖父母にも別居してゐる父にも病名を明して、半年ばかり通ひ続けた。しかし何の効果もないことは勿論である。そして凡ての癩者がするやうに、売薬を服用し薬湯を試みてみたが、やはり何の効目もなかつた。そして今ゐる病院へ這入るまでの一ヶ年に幾度死の決意をしたか知れなかつた。しかし結局死は自分には与へられてゐなかつたのである。死を考へれば考へるほど判つてくるものは生ばかりであつたのだ。

貧弱なカフエ

胸がどきりとして、急いで鏡を出して眺めて見た時には、既に幾分薄くなつてゐるのだつた。私は鏡を投げすて、五六分の間といふもの体をこはばらしたままじつと立竦んでゐた。LEPRA! といふ文字がさつと頭にひらめいた。殆ど決定的な感じがこもつてゐた。私はけもののやうに鏡を拾ひ上げると、しかし眺める気力もなく畳に叩きつけたのであつた。

人は誰でも、自分は特別の位置にあると思ひ込んでゐるし、またさう思つてゐればこそ生きられるのであるが、私もやはりさうであつたのだ。

癩もやはりさうで、この頃になるとそれまで抜けなかつた頭髪が急に抜け始めたり、視力が弱つて眼がだんだんかすんだり充血したりする。

いつたいに慢性病はどの病気でも春先から梅雨期へかけて最も悪化する傾向がある。結核などはその著しい例





以前読んだ「いのちの初夜」が衝撃的ですごく印象に残っている著者。

今回印象に残ったのは、「人は誰でも、自分は特別の位置にあると思ひ込んでゐるし、またさう思つてゐればこそ生きられる」という言葉。真理ですよね。

ぼくも普通を装いながら心のどこかで自分は特別な存在なんだと思っている節があったりします。
恥ずかしいですけどね。
でも、自分が特別な存在なんだって思ったら、もっといろいろなことをやってやろう!みたいにポジティブになれるのも事実なんじゃないかと思います。

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Hiro

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読んだ本の記録。忘れたくない言葉。

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