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日本料理の基礎観念 (北大路 魯山人)

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終わりに、醤油について、ひと言申し上げておきたいと存じます。濃口醤油ではどうもよい料理ができないのです。薄口というのがあります。これは播州竜野でできるのですが、関西では昔から使われています。東京にはこれまでありませんでした。近頃、山城屋には置いています。実際、薄口でなければ、ほんとうによい料理はできません。色はつきませんし、しかも、値段は安く、塩分が多いからよくのびて、経済からいっても大いに安いし、まったく料理には薄口がなければならないといってもよいでしょう。

私は生きた食器、死んだ食器ということをいっておりますが、料理を盛って、生きた感じがしますのと、なにもかも殺してしまう食器とがあります。

魚も鳥も大は、ある時を経てよし、小は、新鮮にかぎると知ること 魚とか鳥とかの大きいものは、相当時間が経過して味のよくなるものがあります。けれども小さいもの、鳥でいえば、鶫とか鶉とか雀とか、魚でなら、いわしとかあじとかいいますものは、獲りたて、または締めたてでなくては美味くありません。

たいなど大きいものになりますと、一日二日おいた方が、かえって味がよいこともありますが、野菜は採りましてからも、ある期間、不自然な発育をしていますから、その処理に工夫を要します。例えば、ねぎにしますなら、青いところを摘んでしまって、白根だけにしておきます。それでないと、青い部分を育てて白根の養分をなくしますから、そうしないようにする。また、だいこんでありましたら、葉をつけたままだと、葉を育てるためにだいこんの方から養分がとられますから、葉を切り放して、葉はすぐ糠味噌に入れるなどした方がよろしいのです。

ほんとうに生きているものを食べる――という心がけが美食には必要となります。生きた野菜でなければ、真の美味は摂取できないわけです。


こぶの出汁を取りますのは、こぶを水でぬらしただけで、五分間か三分間、間をおき、こぶの表面がほとびれた感じのする時、水道の水で、ジャーッとさせないで、音もせず身動きもしないで、トロッと出る水をこぶに受けながら、指先で器用にいたわって、だましだまし、こぶの表面の砂、ゴミみたいなものを落とすのです。そのこぶを熱湯の中へサッと通す。それでいいのであります。これでは、出汁が出たかどうかと訝かられるかも知れませんが、これで充分、出汁ができているので、出たか出ないかは、ちょっと汁をなめてみるのです。これで、実に気の利いた出汁ができています。


削ったかつおぶしがまるで雁皮紙のごとく薄く、ガラスのように光沢あるものでないといけないのであります。こういうのでないと、よい出汁が出ないのであります。削り下手なかつおぶしは、死んだ出汁が出ます。

かつおぶしはどういうふうにして削るか、どういうふうにして材料を選択するか。かつおぶしとかつおぶしとを叩き合わすと、カンカンとまるで拍子木を鳴らすみたいな音でないといけません。虫の入った木のような、ポトポトしかいわない、湿っぽい匂いのするのはだめです。

原料は鳥にしても、あまり成熟しない中くらいのものがよろしいのでありまして、真に賞味出来るのは、そういうものであります。たいについて申しましても、四、五百匁のところがちょうど美味本位に当たるので、一貫目から一貫目以上になると、非常に味が大味になります。しかし、味はたとえ落ちても、大きいたいの頭を兜蒸しなどに使うのは立派でいいでしょうが、実際からいいますと、やはり、美味くありません。大きいのは形と色彩がよくて感じは立派だが、味は論になりません。それならば小振りのものが味がよいといって、小さいものばかりに決めるかといえば、たびたびのことになると、そうばかりにいかない。

料理とは食というものの理を料るという文字を書きますが、そこに深い意味があるように思います。ですから、合理的でなくてはなりません。ものの道理に合わないことではいけません。ものを合理的に処理することであります。割烹というのは、切るとか煮るとかいうのみのことで、食物の理を料るとはいいにくい。料理というのは、どこまでも理を料ることで、不自然な無理をしてはいけないのであります。




著者についてまったくどんな方なのかも知らず、彼の本を最近いくつか読んでいるのですが、
すごいですね。料理の神様なのかさえ思ってしまうほど、真理をついているというか。

「生きた食器、死んだ食器」っていう表現でなるほどと思わされ、
「ほんとうに生きているものを食べる」っていう言葉でガツンと来て、
「料理は合理的でないといけない」という言葉で頭が下がる思いがしました。


”料理”を追究して追及して追及された方なのだと思いました。
尊敬。
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Hiro

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読んだ本の記録。忘れたくない言葉。

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