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檸檬 (梶井 基次郎)

lemonkazii.jpeg

なんと鮮やかな檸檬の描き方。



・もう十分後にはあの丸善が美術の棚を中心として大爆発をするのだったらどんなにおもしろいだろう。
 私はこの想像を熱心に追求した。「そうしたらあの気詰まりな丸善も粉葉みじんだろう」

・私は変にくすぐったい気持がした。
 「出て行こうかなあ。そうだ出て行こう」そして私はすたすた出て行った。

私は何度も何度もその果実を鼻に持っていっては嗅いでみた。
 それの産地だというカリフォルニヤが想像に上って来る。


いったい私はあの檸檬が好きだ。レモンエロウの絵具をチューブから搾り出して固めたようなあの単純な色も、
 それからあの丈の詰まった紡錘形の恰好も


・その果物屋は私の知っていた範囲で最も好きな店であった。そこは決して立派な店ではなかったのだが、
 果物屋固有の美しさが最も露骨に感ぜられた。
 果物はかなり勾配の急な台の上に並べてあって、その台というのも古びた黒い漆塗りの板だったように思える。
 何か華やかな美しい音楽の快速調の流れが、見る人を石に化したというゴルゴンの鬼面――的なものを差しつけられて、
 あんな色彩やあんなヴォリウムに凝り固まったというふうに果物は並んでいる。
 青物もやはり奥へゆけばゆくほど堆高く積まれている。――実際あそこの人参葉の美しさなどは素晴しかった。
 それから水に漬けてある豆だとか慈姑だとか。

・あのびいどろの味ほど幽かな涼しい味があるものか。

・あの安っぽい絵具で赤や紫や黄や青や、さまざまの縞模様を持った花火の束

・私の錯覚と壊れかかった街との二重写しである。そして私はその中に現実の私自身を見失うのを楽しんだ。





初めて梶井さんの本を読んだのですが、ほんとにおもしろかったです。ほ・ん・と・に。
特にこの短編は檸檬について語られていたので、果物好きのぼくとしては外せません(26年間外してきたが)。

読み終わった後は、この本をもっと早くに読んでおくべきだった、と後悔するほどにすばらしいです。
何がすばらしいかって、その文章。檸檬をここまで愛したたった一文が今まであったでしょうか?
そしてこの先、あるようには思えないほどの完璧っぷりなのでした。

天才。


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Hiro

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読んだ本の記録。忘れたくない言葉。

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