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愛するがゆえに 阿部定の愛と性 : 伊佐千尋

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昭和11年、愛する男を絞殺、その後からだの一部を切り取り、
その猟奇事件から世間を驚かせた阿部定。

・阿部定事件を理解するには、事件が起きた昭和11年という特異な、暗い時代背景に
 目を向ける必要がある。
 昭和10年は軍国日本の幕開け。昭和11年年頭、ロンドン会議は決裂。
 新聞は、永野全権が勇ましい脱退通告文を英国海軍省に渡して、帰国の途についた
 ことを報じた。
 この瞬間から、軍縮会議に対する日本の制約はなくなり、いわば無条約状態となった

・安藤刑事が部屋へ入ると、女は寝入っている様子であったが、女中の呼びかける声に
 眼が開き、「警察のものですがー」と聞くや、「あらそう」といいながら
 ニヤリと不気味な笑みを浮かべて起き上がった

・定は真剣な気持ちで男のペニスを切り取り、血文字もしたためている。

・細谷裁判長までが、「妖気を感じさせるような人物」と述べている。
 定は誰の眼にも官能的に映り、容姿だけでなく、声までが男の好き心をかき立てる

・私が殺すつもりで最初、静かに石田の首を締めたとき、「お加代」と言って、
 私に抱きつくようにしましたから、殺されるなどとは考えてもおらず、びっくりした
 のではないかと思いました。
 私は紐を緩めず、心の中で、「堪忍して」と思いながら、そのままギュウと締めた。

・恋文のことを「艶文(ふみ)」といっていた頃

・不見転(みずてん)芸者・・・相手を選ばず、金しだいで客の言いなりになる芸者のこと

・悔しいやら、悲しいやらで、泣けて仕方なく、石田も泣き、実に恋の愁嘆場でした。

・あまり可愛くて、気が詰まるほど石田をギュッと抱きながら

・焦がれている男に百年ぶりに会ったような嬉しさで

・私の言うことを断ることは判り切っているので、私としては心中や駆け落ちはてんで
 問題にしていませんでしたから、結局、石田を殺して、永遠に自分のものにする外
 ない、と決心したわけです。

・(殺害した)その後は、石田の陰茎、陰嚢を切り取り、左腕に自分の名を刻み、死体や
 敷布に血で字を書き残して、「まさき」を逃げた

・私は石田を殺してしまうと、すっかり安心して、肩の重荷が下りたような感じがして、
 気分が朗らかになりました。
 下におりたとき持ってきたビールを一本飲んでから、石田の横に寝て、石田の喉が
 カラカラに乾いているようですから、石田の舌を舐めて濡らしてやったり、石田の顔
 を拭いてやったりしておりましたが、死骸のそばにいるような気はせず、石田が生き
 ているより可愛らしいような気持ちで、朝方までいっしょに寝ており、オチンチンを
 弄ったり、ちょっと自分の前に当てて見たりしておりましたが、その間、いろいろの
 ことを考えているうちに、石田は死んでしまったのだな、これからどうなるだろう、
 石田を殺しては自分も死ななければしようがない、など考えたり、16日の昼ごろ、
 神田にいる大宮先生への手紙を「まさき」の女中に届けてもらったから、この事件で
 きっと先生が警察から調べられるが、飛んだことをした、一目会ったらお詫びしよう
 と思ったりしました。

・石田のオチンコを弄っているうち、切って持っていこうと思い、額の裏に隠しておい
 た牛刀を出して、根元に牛刀を当てて切ってみましたが、すぐは切れず、かなり時間
 がかかりました。そのとき、牛刀がすべって、腿(もも)の辺りにも創をつけました。
 それから、睾丸を切り取るため、また嚢の元に牛刀を当ててきりましたが、なかなか
 切れず、嚢が少し残ったように思います。

・ーーーなぜ石田の陰茎や陰嚢を切り取って持ち出したか?
 それは一番可愛い、大事なものだからです。そのままにしておけば、お内儀さんが
 触られるに違いないから、誰にも触らせたくないのと、どうせ石田の死骸をそこに
 置いて逃げなければなりませんが、石田のオチンチンがあれば、石田といっしょ
 のような気がして淋しくないと思ったからです。
 なぜ石田の腿や敷布に”定、吉、二人”と書いたかといいますと、石田を殺してしまう
 と、これですっかり石田は完全に自分のものだという意味で、人に知らせたいような
 気がして、私の名前と石田の名前とを一字ずつ取って、定、吉、二人きりと書いた。

・もし、先生のことをさように考えなかったら、私はきっと「まさき」の二階か物干し
 で首を吊って死んだのですが、先生のことを考えて外出する気になったばかりに、石
 田と別れるのが淋しいので、石田のシャツを着たり、オチンチンを切ったり、気違い
 じみたことをしてしまったので、世間から変態のようにいわれるのが悔しゅうござい
 ます。

・二階の部屋で一人寝ましたが、布団の中で紙包みを広げ、石田のオチンコと睾丸を
 眺めており、少しそれをシャブッたり、ちょっと当ててみたり、いろいろ考えて
 少し泣いたりして、ろくろく寝られませんでした。

ー著者の思い
・「お定は初めから終わりまで、殺意というものはなかった。彼女の心を占領してい
  たものは、いかにして彼女の愛欲を満足させ、楽しむかという一事だけで、殺意
 がないかぎり、法律上の殺人罪は構成しない」という見方が、正しいと思う。




読む前は阿部定のことを知らなかったのだけど、
読んでいて当時の彼女に一目合ってみたくなった。

誰かを愛しすぎたあまり殺してしまうことは、
実は誰にだって起こりうることではないのかと思う。

行き過ぎた愛は、沼のように深く、抜け出すことが難しい。
それが、ただの男と女ではなく、妻子ある男とだったら。

愛する男に自分だけ見てほしいのに、それが叶わないものと知っている。
一抹の哀しみを抱えたまま愛に落ちていく彼女の様は、同情に値した。
殺しても仕方がない、とまで思った自分は行きすぎなのだろうか。




事件が起きた当時、その猟奇性から相当話題になったそうなのだけど、
メディアが伝える情報にはきっと偏りがあって、真実が真実でなくなっていたと思う。
果たしてどれだけの人間が、彼女の本意を受け止めたのであろうか。

本の中の彼女の言った「世間から変態のようにいわれるのが悔しゅうございます。」
が印象に残る。
実際、本を読み進めていくと、彼女が特に変態でも、ただの殺人者でもないことが分かる。

改めてメディアの在り方を考えさせられた本でもあった。




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Hiro

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読んだ本の記録。忘れたくない言葉。

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