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函館物語 : 辻仁成

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著者の個人的な秘密の函館案内書。


・石川啄木が住んでいたのもこのへんだ。質入れしていたほどだから、その生活は楽で
 はなかったのだろう。もっとも石川啄木が函館にいたのはわずか4ヶ月。
 その墓が函館にあるせいで有名だが、果たして啄木はこの町をどう見ていたのだろう。

・百年も受け継がれた味を守りつづけることはかなり苦労があるに違いないが、押し付
 けがましい伝統はここにはない。

・人生に少しだけ疲れた婦人の横顔が、しかしとても切なく美しかったりするのに
 似て、函館山の横顔は物憂げに私の心を誘うのだ。

・イカソーメン。ああいう料理が大嫌い。観光のために作られたような名ばかりの料理

・観光の手が染まっていない場所にこそ、旅の楽しみは眠っている。
 観光記念物のような、さあここを撮ってほしい、という決められた撮影場所

・私が勧めるのは、観光客が決して押し寄せない入舟町の漁村を覆い尽くす広大な虚無

・朝が待ち遠しかった。

・窓を開け、吹き込んでくる潮風で顔を洗う。

・喧嘩した連中のことはもう覚えていないが、あの若さがすれ違うときの、スパークす
 る火花のような緊張感だけはまだ覚えている。

・ウニは違うけど、あわびはほとんどが岩の下。だから、普通に上から見たんでは
 あわびの姿は見えない。
 昼はちょっとさわると、もう岩に付着してしまってなかなか取れない。ところが夜に
 なると、ぜんぜん岩につかない、力がなくなっちゃう。さらうほどとれるわけ。

・津軽海峡は潮の流れがすごく速いので、まず一回沈むのだけど、海水を吸って体内で
 ガスが発生するんですよ。それで、いったん浮き上がってくる。そのガスが抜けてし
 まって、もう一度沈む。そうしたらもうわからない。

・舟というのは運命共同体というか、連帯感が強いから。

・この町の人には、損得抜きで生きているような人が多い。

・墓場には安らぐ場所と畏怖を覚える場所とがある。こうして多くの人が訪れる墓場は
 幸せだと思った。死者を忘れないこと。私たちは大きな連なりの中でこうして
 生きていられるのだから。

・「ここを出た後の彼らは?」
 刑務官は、小さく首をふった。
 「残念ながら、私たちはここを出た後の彼らがどのような人生を生きるのか、どのよ
 うに更生していくのか、最後まで見届けることはできません。」

・経済や活気を求めることと、文化や風土を守るということは必ずしも両立しない

・首根っこまで温かくなり

・啄木の作品の魅力
 大きく言うと、詩歌、小説、日記、評論の分野があり、どれをとっても時代の古さが
 ない。非常に時代を先取りして社会をきちっと見ている。詩歌の場合でも、難解な言
 葉をぜんぜん使っていない。26歳までの人生で、いくら天才でも完成されていると
 は言いがたい。でも26歳での早熟な美。
 
・歌というのはご飯を食べるときにそえられるたくあんのようなものだ、という言い方
 をしている。地べたに足をきちっとくっつけて社会を見ながら歌をつくらなければ、
 ただ理想や空想や想像だけで歌をつくるのは本物の詠み人でもないし、本物の作品で
 もない。

・啄木三悪。女にだらしない、お金にだらしない、自分勝手。
 明治43年の借金メモで、今にすると1500万円ぐらいのお金を借りていた。
 それだけのお金を借りてでも、文学に身を投ずるという、そのパワーはすごい

・一般的に啄木の小説というのは評価が低い。詩や短歌をつくるよりも、小説を書いて
 売ったほうが金になるのは確か。

・小説は、早い時期に書いちゃいけないというのが僕の持論なんです。特別な人はいま
 すけど、小説は40歳ぐらいからスタートしても充分な芸術なんだと思います。




著者らしい観光に対する想いがおもしろいなと思った。
観光名所って「写真をさぁ撮ってくれ!」みたいなとこって、本当にあるし、
観光のためにつくられた料理みたいなのもあちらこちらに存在している。

そういうものって、確かにいいとも思うけど、
やっぱりどこかツクリモノというか、本当に感化されるものではないように思う。

それよりもっと自然な、美しいものを見つけるのが、旅かなぁと読んでいて思った。(あくまで僕の場合だけど)
とはいえ、もちろんそういう名所だとか、地元の食べ物を味わうことも旅の醍醐味だとも思う。
つまるところ、旅は、旅によって、何か大切なものに気付いたり、それを取り戻せたりすることが、
一番大事だと思う。




啄木の話が多く、啄木の研究をされている方に著者がインタビューをしており、その内容が参考になった。



機会があれば、一度訪れてみたい場所である。

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Hiro

Author:Hiro
読んだ本の記録。忘れたくない言葉。

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