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愛 : 井上靖

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3つの愛の短篇集。



結婚記念日
・後妻を迎える気になれないのは、加奈子に懲りているためではなく、むしろ加奈子に
 済まないような義理を立ててやりたいような気持ちが働いているから

・倹約屋(しまつや)

・「やはり、俺は加奈子を愛している」

・口を開いていないと現在自分に舞い降りてきた幸運がたちまちどこかへ
 逃げていきそうに思えた

・爪に火をともすようにしてためた6千円の金

・「言いたい人には言わしておけばいいわ」

・絶えず何ものかと闘った共同の防衛者に、春吉はついぞ今までに持ったことのなかっ
 た堪らなく切なくいじらしいものを感じた



石庭
・風が吹いていた。昔の風だった。

・庭といっても、白い砂が水平に一面に敷かれて、その中央に、石が数個置かれてある
 ばかりだったが、この清潔簡素な庭の持つ何かきびしいものが、それを観ている者の
 心を打ってくるのだった。

・龍安寺の石庭の持っている異様な冷たい美しさに、流されてはいけない妥協してはい
 けない、こんな声が身内から聞こえた。あの静かな石と砂のお庭は、わたしから
 弱さを取り上げ、冷酷なほど、わたしを強くしてくれました。




死と恋と波と
・初めて自分の満足する気に入った死場所を見つけた落ち着き

・この世における自分の最後の行為

・スープにスプーンをつける。杉が皿の中の池を乾してしまった

・「邪魔はしません。人間は自由を持っています。死をさえ選べる自由を」

・杉千之助の四字は、いつでもちょっとした清涼感を持っていた

・それはぞっとするほどの懐かしさ

・「わたし、死ねませんでした」

・「自分の自殺するのを、じろりと横目で睨んでいる人間があると思ったら、
  人間、死ねなくなりますわ」

・人間は一点に立っていることはできない。

・名声は誤解の集積だって言った人があります。汚名だって同じことでしょう。

・曖昧模糊とした観念

・氷のような好意




発表されたのは昭和25年と26年。
読んでいる最中、その頃の景色みたいなものが、頭の中で描かれた。
どの短篇にも、男と女がいて、それぞれ違いはあるものの、
愛を認識している。


「結婚記念日」を読んで、お金こそが幸せなんかじゃないと教えてくれる。いや、諭してくれる。
貧乏でも、愛する人がいれば、いたらならば、それでいいんじゃないかと思う。


「石庭」で強く印象に残るのは、見合結婚というカタチで納得していた若い妻が、
石庭を見た(感じた)ことで、恋に、生きることに妥協をすべきでないと悟り、夫のもとを去ったこと。
妥協しない生き方、っていうのは大事。



「死と恋と波と」では、演劇を見ているかのような情景が浮かぶ。
自殺を考える2人が出合い、愛を見つけ、生を得る。
「人間は死さえ選べる」という言葉が印象に残る。
もし神様が人間の頭の中から自殺、なんて言葉を抜き取ったら、
人間は最高に辛いことがあったときどうするんだろうか。
そんなどうでもいいことまで考えてしまった。



全体的に品良く収まっている。
初めて井上さんの本を読んだが、昭和の時代を数年しか生きていない自分でも味わえる昭和が、
古臭いというより新鮮だった。
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Hiro

Author:Hiro
読んだ本の記録。忘れたくない言葉。

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