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100回泣くこと : 中村航

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王道的恋愛小説。
(※ネタバレ含みます。たぶん。)












・犬の一年は人間の七年に当たる

・犬は何故だかいつも、目覚まし時計に寄り添うようにして眠った。
 時計の針の刻む音が、母犬の心音を連想させて子犬を安心させる、とは後になって
 知った

・赤道を一周すると約4万km

・「やあ」と彼女は言った。「嫁に来たよ」

・卵巣がんは若年層から高齢層まで発生する特異ながんであること。米国では70人に
 一人がかかる病気であり、日本でも増えてきていること。初期には無症状であること
 から、卵巣は「沈黙の臓器」といわれること。がんが進行してから、初めて自覚的な
 症状がでるため、転移した状態(Ⅲ、Ⅳ期)で発見されることが多いこと。

・彼女の意志は透明なまで薄く

彼女は静かに死んだ

完全に死ぬということ









ぼくが高校生のとき「世界の中心で愛を叫ぶ」という本がとても流行った。
ぼくも漏れずに読んだし、ドラマや映画も見た。はまっていたあの頃。

この本は今まで忘れていたそれを思い出させてくれた。感謝。




「完全に死ぬこと」っていう表記が一番引っかかって、完全に死ぬことって何だろうと考えたら、
それはぼくは「人々から忘れ去られること」だと思った。違うかな。




あまりこういう本をそこまで楽しく読める年頃ではなくなってきたんだなぁ、と読みながら残念に思ったけど、
それなりにこんなおっさんでも感動もさせていただいた。
ピュアな小説をありがとうございました。

いつまでも若く在りたいものです(笑


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チョコレート革命 : 俵万智

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97年初版。
今は2013年だけど、ぜんぜん古臭く感じることのない、瑞々しいままの短歌たち。




・なくてもいいものにこだわる週末を探してやまぬホースラディッシュ

逢うたびに抱かれなくてもいいように一緒に暮らしてみたい七月

・抱かれることからはじまる一日は泳ぎ疲れた海に似ている

・骨の髄味わうためのフォークありぐっと突き刺してみたき満月

・チョコを買うように少女ら群がりて原宿コンドマニアの灯り(コンドーム専門店)

忘れるという知恵を持つこの国の平和、それでも平和を愛す

・水密桃の汁吸うごとく愛されて前世も我は女と思う

・一枚のタオルケットを分けあえばつぼみの中の雌しべになった

・やさしすぎるキスなんてしてくれるからあなたの嘘に気付いてしまう

「気分」という割り切れぬ語で返事する我を許せよ我の気分を

・誰かさんの次に愛され一人より寂しい二人の夜と思えり

・子どもとは何をおいても笑わねば、笑わねばならぬ生き物と知る

・「結婚することになったよ」「なったんじゃなくてすることに決めたんでしょう」

・一億総中流となり中流の我ら貧富の誤差にこだわる

抱きあわず語りあかせる夜ありてこれもやさしき情事と思う

・祈るとき人は必ず目を閉じて何もなかったように立ち去る

・「二人とも愛しているんだ」腕ずもうのように勝負がつけばいいのに

・「愛は勝つ」と歌う青年
 愛と愛が戦うときはどうなるのだろう

・男ではなく大人の返事する君にチョコレート革命起こす


・一人は寂しい二人は苦しい

・ウォッカオレンジのような二時間

・焼肉とグラタンが好きという少女よ私はあなたのお父さんが好き



あとがき
・私は出会いというものを、このうえなく大切に思っている。
 だって、ほんの百年ずれていたら、二人は会えなかったのだから。

恋には、大人の返事など、いらない。君に向かってひるがえした、甘く苦い反旗。
 チョコレート革命とは、そんな気分をとらえた言葉だった。

・大人の言葉には、摩擦を避けるための知恵や、自分を守るための方便や、相手を
 傷つけないためのあいまいさが、たっぷり含まれている。そういった言葉は、
 生きてゆくために必要なこともあるけれど、恋愛の中では、使いたくない種類の
 ものだ。





俵さんはこの頃不倫をしていて、それは妻子ある人だったということが赤裸々に伝わってきた。赤裸々に。

有名な人がこうやって惜しげもなく、自分の不倫の体験を詩にし公表するのにためらいはなかったんだろうかと
考えたけど、ほかの本で「歌は心が揺れなけれ生まれない。」とおっしゃっていたので、
そういうことなんだろうなぁ。
詩にすることで、何かしら消化できるものがあるのだろうと思う。

この本が出た頃、きっと世間からの不倫に対する批判もあったのだと推測するが、
それを承知で出しているのだから後悔はまったくないのだろう。
そういうところが、素敵。ありのままで。







・「愛は勝つ」と歌う青年
 愛と愛が戦うときはどうなるのだろう

この短歌が一番グッと来た。
きっとそんな場面が人生の中で何度かあるはずだから考えさせられた。

もうひとつの恋 : 俵万智+浅井愼平

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恋の短歌に、想像力を喚起する写真。



・連絡のとれないことが
 寂しくて
 たいした用などないのだけれど

・1週間ぶりにあなたの声を聞く
 土曜を何と名づければいい

・「私から電話します」と言って切る終りにできない想い切るため

いま愛してる

・もう次に会う日のことを考えている目の前に君がいるのに

・不機嫌の理由が見えない
 君のそば
 明るいだけがとりえの私

・「雪」は「雪ぐ(すすぐ)」
 私の何を雪ぐため
 みぞれ静かに降ってくる朝

・俺とおまえが俺たちになる


歌は心が揺れなけれ生まれない
 恋は、心の揺れそのもの。恋は、歌の種そのもの。





俵さんの恋愛の詩はいつだって素敵だ。



この本で一番印象深かったのは、「いま愛してる」っていう言葉。

いま。
当たり前だけど、「過去に愛してた」でも「これからも愛してる」でもなく、今。
今愛すことができたらそれでいい、過去も未来も見ないで、今、それだけでいいんだ、って。



今を愛せる恋愛はいいなぁ、と思った。
一直線に愛せそうだから。







恋文 : 俵万智+荒木とよひさ

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秘密の恋の往復。




・ボクの夏はそこでぷっつりと途切れ、
 そこからの夏はただの夏

・雪は突然すべての音を消してくれる。

・がんじょうな汽車さえもためらいがちに

・いつか失うものという前提で、私が輝いているのだとしたら、
 それはとても悲しいことです。

・ほんの小さなあしただけ

・家庭という型に、心をはめ込んでいる自分の姿が見えません

・「もし」たちからは、何も生まれてきません。

・絵本。子どもが、初めて出会うのに近い言葉

人は花を見るときに花の美しさだけを見てしまい、花に隠れた葉はあまり見ない。
 薔薇には緑の葉があって初めて美しく、その葉がなかったらつまらないただの花

・生活の贅沢や便利とかいうものは、心の豊かさを削り取りますが、貧しさの中の
 生活は、物の大切さ、ありがたさや分け合う気持ち、そして心の灯を灯すものだと

・アメリカの女性文学者が、愛は3年で死ぬと言っています。
 愛が死に、そしていつか愛情という型に変わり、普通の男と女になり、
 時という大きな手のひらの中に包まれ、良き夫婦で晩年を迎える

・「暑いですね」が、日本の標準のあいさつみたいな、今日このごろ

・手触りのある恋

・「アタシは必ず死ぬ。だけど、必ず死ぬっていうことでは、アンタも同じなのよ。
  ほら、その交差点を歩いている人たちだって、百年後には全員必ず死んでいる。」
  百年後には、誰もいないーと思うことは、絶望ではなく、希望。
  百年後には愛さえあとかたもなくなっているかと思うと、なぜか爽快

秘め事という言葉のニュアンスは、秘密(シークレット)とはどこか違う奥行きがある。
 日本人ならではの言葉

・この世で、誰よりもあなたのことを知っている人、というより、ある意味、
 誰よりもあなたの心を占めている人

・演劇の言葉というのは、その日その場で消えていく
 






妻子ある男と、女流詩人の不倫。そこで交わされる手紙が素敵。

この女性は、決して男が妻と別れないことを享受できているのがすごいなぁと思った。
嫉妬の念すら愛おしくなるような、ゆるやかな愛し方だと思う。
それができる人って現実には、なかなかいないんじゃないだろうか。

でも、もし文中にあった

百年後には愛さえあとかたもなくなっているかと思うと、なぜか爽快

と思えたら、ぼくにでも何だってできそうな気さえしてしまう。



この本を読んでから、
人から妬まれるような恋をしてもいいのかも、なんて思ったり。
周りの人を傷つけても、自分が苦しくなっても、いつかは皆いなくなるのだから。

本能のままに生きてみたいものだと思う。







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Hiro

Author:Hiro
読んだ本の記録。忘れたくない言葉。

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