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ガルシアへの手紙 : エルバート・ハバード

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求められる人。
著者はアメリカを代表する教育者(1856-1915)


・「ガルシア」=「変化」の対象、やるべき「課題」に、恐れず、勇気を持って挑む人、
 それが、現代のローワン

・時代の変化と課題に自ら進んで挑み、結果を出しつつ新しい世界を切り開いていく人
 こそ、この難しい時代に求められる人物

・すべての経営者は、自分たちの利益を生み出すことに最も貢献する人間、すなわち、
 ガルシアに手紙を届けることができる人たちだけを残す

・私が心をひきつけられる人とは、上司がいようといまいと、自分の仕事をきちんと
 する人である。

・そして、ガルシアへの手紙を頼まれたなら、その信書を静かに受け取り、馬鹿な質問
 をせず、近くの下水に捨ててしまおうなどとも思わず、ガルシアに手紙を届けること
 に全力を尽くす人は、決して仕事をクビになることはないし、賃金の値上げを求めて
 あれこれ画策することも必要でない。

・教訓ー目の前の物事に対して、「自分がやるんだ」という気持ちを持つということ

・自分が見込まれ、自分が頼まれた以上、その信頼になんとしても応える。これがこの
 社会を支え、この世の文明を発展させていくのだ

・明治維新のころ、当時の日本人が心の支えとして、それこそバイブルのように読んだ
 2冊の本。1冊はサミュエル・スマイルズの「セルフ・ヘルプ」。
 もうひとつは福沢諭吉の「学問のすすめ」。福沢は述べる。この貧富、強弱というのは、
 別にもとから決められていることではなく、その国民がいかに勉強するのか、
 しないのかにかかっている

・メイド・イン・ジャパンは品質のよくない製品の代名詞だった。

・ケネディが就任演説でいった、
 「国が何かをしてくれるかではなく、あなたが何を国のためにするのか」

・いつまでも弱い人は、ある意味でぜいたくな日と。自分の夢や希望を持ち続けること 
 を止め、他人に頼ろうというのだから。
 きっと、誰かが自分を助けてくれるであろうことを心のどこかで望んでいるから。
 期待しているから。

・明るく、前向きに生きるという「覚悟」

・成功の定義
 1自分のやりたいことを見つけ、または見つけようとし、かつ、
 2よい人間関係を築けること

・本を読む人は、自分を成長させようという問題意識をどこかに持っている

・人を頼るのではなく、自分が人のために、何とかするぞという生き方をしようと
 思う人を、実は社会も、他人も放っておかない

・どんな人でも、少なくとも一日にひとつ、自分には難しいことだと思えることに挑戦
 し、それをやり抜かないかぎり、人として大した成長はできない。

・友人たちには笑顔であいさつし、気持ちをこめた握手をしよう

・人に言われることなしに、自ら、正しいことをすること
 人は、あまりにも、自ら進んで意欲的に物事に取り組まない傾向がある

・悩みには2通りある。自分の力で解決できるものと、そうでないもの。
 後者を悩むのは人生の命取り。ナンセンス。

・真の友とは、あなたのすべてを知っていて、それでもあなたのことが好きな人のこと

・人は、どこまでも魂を理解しあえる友を持てるほどの喜びはない。

・いつまでも無知でいる秘訣は、実にやさしい。
 いつも自分の考えだけを肯定し、自分の知識に満足していればよい。





よくある啓発本、といった印象。
こういった本を定期的に読むと、少しは精神的に良いのかもとも思う。

簡潔にまとめれば、「人に頼らず、自分の力で前を向いて生きていけるようになれ」ということでしょうか。


”明るく、前向きに生きるという覚悟”という文の「覚悟」が印象に残った。
覚悟ってよく使われる言葉だけど、薄っぺらい覚悟が世の中に散漫しているような気もするこの頃。
自分の覚悟って何だろう、厚い覚悟ができているのかどうか考えさせられた。


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旬のスケッチブック : 俵万智 

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12の季節の言葉のスケッチ。




1月大根
・ぴっちぴっちの大根が、八百屋さんの店先にどーんと積まれるようになると、
 「おお、冬だ!」という気分になる。

・緑の葉っぱがわさわさついていれば、なお嬉しい。これで今日はほうれん草を
 買わなくてすむ。

・さっと茹でて、おひたしにしてもおいしいし、細かく刻んで炊きたてのごはんに
 混ぜれば、目にも鮮やかな「大根めし」

・買い物の袋から葉っぱがぴょこんとはみ出す風情もいい。

・「みぞれ和え」というネーミングをした人に、心から拍手。
 唐辛子と一緒におろして作るオレンジ色の「もみじおろし」も、素敵な命名だ。

・「ばっさりと」には、内に秘められた激しい思いが感じられる。
 「切る」ではなく「斬る」。迫力満点だ。

・大根おろしを作るとき、剥いた皮を私は、短冊のように切って、ごま油としょうゆを
 同量ぐらいずつ混ぜたタレにつけておく。できれば鷹のつめ、なければ一味か
 七味唐辛子を、ぱっぱっぱ。すると翌日には、歯ごたえばりばりの、おいしい
 漬物になっている。


2月チョコレート
・どこかにチョコレート畑というのがあって、2月にいっせいに収穫されるのでは
 ないかと思ってしまう。

・「いつもさっさと帰っちゃう男の子がさ、なんとなく放課後もぐずぐずしてたり」

・チョコレートを溶かしたものがホットチョコレートではなく、歴史的にいうと逆。
 スペインの人が、カカオの粉に砂糖と牛乳を加えて飲み物を発明。
 それから200年後に、それを固めてチョコが作られた。


3月菜の花
・もともと菜の花の「菜」は、副食物を総称する「肴(な)」や、食用にする魚の
 「魚(な)」と同じ語源なのだそうだ。早い話が「おかずの花」

・さっと茹でて芥子あえにするのが私は一番おいしいと思う。

・ほろ苦いの「ほろ」が大切なのだ。そしてこの微妙な感覚は、
 日本人独特のもののような気がする。

・昆布ではんく、ぬかの入った袋で押しをするとまた違った風味になる。
 つぼみを、豆腐などと一緒におすましにするのもいい

・献立に、何かひとつでも季節を感じさせるものがあると、会話がはずむ。



4月新キャベツ
・春を感じるさせる野菜は?
 私は迷わず新キャベツと答える。このふわふわ感がいかにも春である。

・古キャベツでは、いかにもバリバリ固くてまずそうだ。ところが冬キャベツと
 呼んでやると、落ちついたあったかい感じがする。

・煮ても焼いてもおいしく食べられる。青々とした外の葉っぱは、ロールキャベツは
 もちろんのこと、炒めると一層甘みを増すし、中のやわらかい部分は生食に最適。
 サラダや即席漬けに活躍する。中心の巻いているところはたっぷり刻んで餃子に
 入れると、とろとろっとしてほんのり甘く、やさしい味になる。

・外の葉っぱ、中の葉っぱ、中心部分ー一個の中にもそれぞれの使い道があるのが、
 いい。場所によっていろんな料理のストーリーが考えられる。こういうのを
 「ドラマ野菜」と、私は勝手に呼んでいるのだが、キャベツはその代表選手でもある。
 
・葉っぱ一枚で、一日に必要なビタミンCがOK
 野菜の中ではたんぱく質も多いほうです。


5月いちご
・イチゴ大福。あんの中にすっぽり隠してしまうところが、意表をついている。見てく
 れのためではなく、味のためのいちごなのだ、とでもいうように。

・ひな祭りやクリスマス、誕生日などに欠かせないということで、最近では
 イベントフルーツと呼ばれているそう


6月あお梅
・「あの色」としか言いようのない柔らかいやさしい黄緑の青梅が、ざるに盛られて
 並び始めると、そろそろ梅雨入りだな、と思う。梅の雨、とはよく言ったものだ。
 東北地方などでは、梅雨の終わりを思わせるのが、あの黄緑なのだそうだ。

・氷砂糖。ゆっくりゆっくり溶けてくるお菓子の原石は、私にとってはダイヤの原石


7月トマト
・最盛期に完熟し、栄養分もしっかり育成した上で木からもがれたものは、「追熟」の
 ものより、3倍のビタミンCが含まれているそう

・ウキウキしているときは、八百屋さんの野菜も何か、みんなウキウキしている
 ように見える。逆に気持ちが滅入っているときには、どれもこれも、暗い野菜に
 見える。


8月氷
・いちごやメロンなどのシロップのけばけばしさも、暑さでぼーっとした頭には、
 かえって刺激的でいい。夏は原色が似合う季節

・自分にとっては辛いこの失恋も、相手にとってはひとつのエピソードに過ぎない


9月きのこ
・「たけやー、さおだけー」と威勢のいい声でやって来る竿竹売り。私はずっと
 「竿だけ=オンリー竿」の意味だと思っていた

・煮物や和え物は、単品よりも何種類かのきのこを使ったほうが、それぞれの風味が
 生きるそう。


10月牡蠣
・「どんなに嫌いなものでも、3個は食べなくてはいけません」

・牡蠣は、栄養的にも大変すぐれていて、ヨーロッパでは「海のミルク」と呼ばれる。
 「畑のミート」は大豆。


11月落ち葉
・「木は黙っているから好きだ
 木は歩いたり走ったりしないから好きだ
 木は愛とか正義とかわめかないから好きだ」

・飴いろのもみぢ、というのがまた渋い。赤や黄色、といった派手な色彩ではなく、
 重ねられたときを感じさせる、こっくりとした深い色。


12月ケーキ
・ショートケーキの「ショート」が、そもそもどこからきているのか知らないので
 決めつけることはできないが、なんだか変だ。

・ブッシュ・ド・ノエル=クリスマスの薪という意味。丸太を燃やした灰が、
 雷や火事よけのおまじないになるというリトアニアの神話がもとになっているそう。





著者の感性はやっぱり違う。
平凡なものの彩り方が違うと思う。
人が気付かないような小さな幸せさえ、残らず掬い上げるかのような感性には脱帽。


野菜と果物を売っている人間なので、とってもおもしろく読ませていただいた。
もちろんそうでない人も、楽しく読めると思う。


日本語の妙。
こういう本を読むと、日本に生まれてよかったと本当に思う。
感謝。


ブロークバック・マウンテン : アニー・プルー

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同性愛の悲劇。




・まじまじと見つめたりしない限り、夢は昼のあいだも消えずに燃え続け、
 あの底冷えする山を過ごしたかつての日々を、もう一度温め直してくれるだろう。

・この夏の残りをどう過ごすことになるかは、二人ともわかっていた。
 羊なんかくそくらえだ。

・音といえば甲高い泣き声と、乳をちゅうちゅう吸う音と、アルマの眠たげな
 うめき声。どれも繁殖と生命の継続を感じさせ、心安らぐ思いだった。

・熱い衝撃がイニスを内側から焼き焦がし

・そして自然に、まるで正しい鍵が鍵穴のシリンダーとかみ合うほど自然に
 二人は口をくっつけた

・自分で解決できないなら、それは我慢するしかないんだ。

・何年も何年も、二人は苦労して高原の牧草地や山の減流域に登り続けた。

・寝そべったまま枯れ木を火に投げ入れた。
 火花とともに、二人の真実と嘘とが舞い上がった。

・ひとつだけ、時を経てもずっと変わらないことがあった。
 たまの逢瀬のめくるめく興奮に、時間の意識が影を落としていること。
 飛び去っていく時間。足りない、いつだって足りない時間。

・はっきり言うぜ。一度きりだから、よく聞けよ。俺たちは一緒に、
 すばらしい生活が送れたはずだ。本当に夢のような生活が。
 だがイニス、おまえはそれを断った。おかげで俺たち二人は、ブロークバック・
 マウンテン以外に何もない。すべてがあの体験の延長でしかない。
 まったくの話、本当にそれだけなんだ。

・ジャックには忘れられない体験があった。それが起こったのは、ブロークバック・
 マウンテンでのあの遠い夏のことだった。
 ある夜、イニスが背後から近づいてきて、彼を抱き寄せた。その静かな抱擁は、
 二人がともに抱えている渇き、性とは別の渇きを癒してくれた。

・炎が赤らんだ光の塊をぶつけて来て、二人の身体が作る影が、岩の上で一本の柱に
 なっていた。このまどろみながらの抱擁は、ジャックの記憶にしっかりと根を下ろし
 た。二人の離れ離れの辛い人生にほんの一瞬訪れた、嘘いつわりのない、魔法のよう
 な瞬間だった

・違う、とイニスは思った。タイヤ・アイアンでやられたんだ。

・どこかでクリーニングに出してなくしたばかり思っていたチェックのシャツ。
 ジャックはこれを盗んで、自分のシャツの中に隠していたのだ。
 まるで二つの皮膚のように、一つをもうひとつの内側に入れてーいや、二つを
 合わせひとつにして。

・愁いの涙

・自分が知ったことと、信じようとしたこととのあいだには、いささか隙間が
 空いていた。だが、それはどうすることもできない。そして、自分で解決できない
 なら、それは我慢するしかないのだ。


あとがき
・主人公の青年二人が16年間にわたって逢引きを続けた山々

・イニスは亡き父から植え付けられた恐怖のために、自身の性的志向や感情と
 向き合えず「自分で解決する」というアメリカ的マッチョ主義を棄てることもできず、
 結局は自分の殻に閉じこもっていくしかない。

・1920年代から90年代まで、北米では男子新生児への割礼がきわめて広く普及して
 いた。背景には、表向きの理由として「清潔を保つ」、裏の理由としては「自慰を
 行いにくくする」






なんとなくまた読みたくなって、2回目。
時代(舞台は1963年ワイオミング州)に色濃く残る同性愛の陰を描きだした作品。

今でも、日本では男同士が手をつないで歩くなんて難しいのかもしれないけど、
イニスとジャックが生きた時代はもっと過酷で、残酷。同性愛がばれると殺される時代。
16年も逢瀬を重ねる二人は、本当に頭が下がるような想い。好きだからこそなんだ。


読むと、悔恨の想いに駆られる。
と同時に教えてくれるのが「チャンスを逃すな」ということ。

大事な物語。

ジェニーの肖像・それゆえに愛は戻る : ロバート・ネイサン

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ロバート・ネイサンは1894年ニューヨーク生まれの詩人。





*ジェニーの肖像*



・まるで静かな夢のアーチをくぐり抜けるかのように歩きつづけた。
 体が軽くなり、体重を失い、夕暮れの空気でできているように感じられた。

・子どもの遊びというのはとても真剣なのだ。

・ぼくはあたたかく幸せな気分になった。ほかの人間といっしょにいて、
 自分は今何をしようとしているんだろう、なんてことを考えたりせずに、おしゃべり
 するのはいいものだ。

・女性には時間を超越した何かがあるべきだ。男にはそれがないーわれわれは
 つねに現実のことで頭がいっぱいだから

・ぼくは5番街にでた。そこが歩きたい通りだったからだ。
 初めてそこがぼくの世界であり、ぼくの街であり、ぼくの青春、
 そこからぼくの希望にふさわしいところだと感じていた。

・なんてわずかなものなんだろう。ぼくたちと、待ち構えている寒さや、神秘や、
 死のそのあいだにあるものはー

・明日が嵐のなかに消えてしまったらどうなる?

・ぼくたちの前にある、明日の太陽が昇ると思っていたところに、
 ふたたび昨日を見つけるのだろうか?

・視線をゆっくりずらしながら、ひとつひとつを穴があくほど見つめていた。

・「どうしてひとは、ときどき、見たこともないものなのに、知っているのかしら。
  まるで、いつか見ようと思ってて、それで、見ようとしていたら、
  それがどんなふうに見えるか思い出せるみたい」

・無情でリアルな、現在を抱え込んだしみだらけの4つの壁。

・芸術家は自分自身のため、そして仲間のために、なにかしら答えを見つけ出さなくて
 はならない謎に囚われている。

・色彩のとりこ

・自分の才能を決して疑ったことがないという点で、幸せな男

・彼女にはほとんど重さがないように思えた。

・あなたはあたしのところには来られないんだから。あたしだけが
 あなたのところに来られるのよ。

・あの年頃にはみんな秘密をもっている。

・ねぇ、どうしても人はときどき、何かを悲しんだりするのー
 まだ起きてもいないことを。きっと、それはこれから起こることなのよ。
 これから起こることを知りたくないから、それを不安とかなんとか呼んでる
 だけなんじゃない

・この世では、われわれは自分たちの無知や単純さに十分には
 感謝していないのかもしれない。神のことを考えたり、宇宙の考えたりもするが、
 あまり深くは考えず、それが神秘であり、もしもきちんと説明されたなら
 理解できないものだということを、本当には信じていない。

・われわれは愚かに創られたのだー無知で単純に。そしてその無知のみが、
 謎だらけのこの地上で楽に生きることを可能にしている。
 単純さこそがわれわれを、えんえんとつづく日々のなかの別の一日に目覚めさせて
 くれる。無知こそがわれわれの行為のひとつひとつを、新しいものであり、意志を
 働かせた結果であるように見せてくれる。

・残ったのは晴れ晴れとした心地よいー寂しさだった

・彼女の人生の糸がぼくの糸に織り込まれていて、時間や世界でさえ
 ふたりを完全に引き離すことはできなかった。

・やりたいことができないなら、金持ちになる意味などあるだろうか?

・知らなきゃならないことは山ほどあるのに。ぼくらは味覚や触覚に頼って生きてる。
 目の前にあるものしか見ずにね。




*それゆえに愛は戻る*




・悲しみはーあるいは悩みもーひとりで背負うべきもので、だれかと分け合うことは
 できない。しかし、喜びは分け合うものであり、愛もまた同じ

・彼女は決して独占しようとはせず、ただじっと見守ってくれていた。

・詩人が自分自身から美や英知を紡ぎだす方法。

・「カニたちは、釣り針が体の中に入ってくるとき、悲鳴をあげているのよ。でも、
 だれにも聞こえてないから、おとなしく自分の運命に従うの」
 「カニは自分たちが何なのかなんて、最後までわからないわ。カニは、自分たちが
 美しいと思っているだけ」

・今のあたしじゃないものになんて、なりたくない。

・きみは悲しみと仲直りしなくちゃいけないね。
・ショービジネスの世界では、人々を不幸のなかに置き去りにはしないんだ。
 もう二度とスクリーンを見てくれなくなるからね。

・愛は決して消えたりしないわ。それはあなたについてきて、
 あなたを見つけ出すのよ。

・美はうつろうだけ 決して消えはしない。

・もっとも情の深い動物とされる雌ギツネや、クマ、雌のライオンたちは、自分の
 子どもたちに彼ら自身の世界を作り、親を忘れるようにと教え込む。
 ワシは子どもに飛び方を教えた後、二度とその姿を見せることはない。
 クモは自分のできの悪い子どもをしばらくのあいだ背負っているが、それも
 長くはつづかない。スズメバチはまだ生まれていない娘をたくさんの食糧とともに
 ひとりぼっちで置き去りにする。
 人間だけが、最初から最後まで子どもたちといっしょにいるのだ。
 
・放してやる前に魚に何かささやくのだった。
 「欲張りだから罰があたったのよ」

・愛がなけりゃ、何を手に入れられるかね?

・彼女があんまりにもうれしそうなので、こっちまでうれしくなってしまった。

・愛がまだ、からっぽの部屋をあたためているような。






一般にいえばどちらもファンタジー小説なんだけど、自己啓発本みたいな印象も受ける。
生きる上での原則的なことが台詞に込められているから。

愚かで無知に生まれたことが幸せだと捉える台詞は興味深い。
たしかにそうなんだ。無知だからこそ、生きる意味があるように思う。


詩人らしい感情の比喩表現がとっても素敵で、読んでいて本当に楽しかった。


看護婦が見つめた人間が死ぬということ :宮子あずさ

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看護婦の目で見つめた死。





・死の瞬間、さまざまな思いが胸をよぎりながらも、残される身内の方の悲しみを
 思うと、言葉をのみこんでしまいます。そして気のきいた言葉など言うゆとりは
 ありません。はたから見れば、さぞ事務的に仕事をしているように見えているこ
 とであろうと思いつつも、それ以上のことは、できないのです。

・多くの人が死そのもの以上に、老いて寝たきりになることを恐れています。
 「死ぬならぽっくりいきたいわ。願いはそれだけ」

・先が見えているからこそ、人間は人に尽くせる。
 多少自分を犠牲にもできる。

・歩けるようになったらという空手形を出すことによって、”家に帰れないのはあなた 
 が歩けるようにならないからよ”と責任転嫁するずるさ

・すべての子どもが親の老後をどう援助するかについては、自分の問題として
 考えなければ、まずい

・逃げの姿勢で、できない言い訳を並べるのではなく、”自分にはどこまでできるか”を
 それぞれが持ち寄る姿勢で話し合えば、もう少し話が進むのではないかなぁ

・自分たちの関係が試される時期に入ったと腹をくくって、親の老いとつき合うこと

・最後まで意識がはっきりとしていて、きちんと何かを言い残して死ねること自体が、
 非常にまれ。肺がんで亡くなった人のほとんどは、耐えられない息苦しさをとるため
 にモルヒネを使って意識を落としたり、そうでなければ脳への転移で意識が落ちたり
 と、最後の段階ではもうろうとされていました。

・肺がんは脳への転移のほか、骨にも転移しやすい

・苦痛が人格を変える

・夫や子どものために自分の人生の多くを犠牲にしてきた年配の女性の心の奥底には、
 純粋に夫の死を悲しめない何かが存在する場合がある

・病院にいると、だんだん自分が社会から忘れられていく気がする。

・抗がん剤の主な副作用の一つとして、白血球の減少。これが起こると弱い細菌にも
 体がやられてしまう

・看護婦として、というより人間として、役にも立てない気休めしか言えず、
 それに対して相手が気を使って慰められたふりをしてくれるくらい、無力感を
 覚えることはありません。

・うめいたり、けいれんをするだけ。おそらく彼に意識があれば、彼が父として、夫
 としても、もっとも見せたくない姿だったに違いない。

・自分ががんだと嘆いている人でも、晩御飯においしいものが出れば喜ぶ。
 そんな人間の、素朴な強さに触れる時、私はこの仕事についてよかったと、
 心から思う。

・独立したふたつのがんにかかることをダブルキャンサー

・抗がん剤・放射線はそれ自体が発がん性を持つ

・人間は平等かもしれんが、人間の運命は不平等なんだ。

・看護婦はほかの職業に比べて、宗教と出会う機会は多いといえる

・「自分が死ぬなら何の病気がいいか、絶対避けたい病気は何か」
 ぽっくり願望は看護婦の間にも根強い。肺がんと膵臓がんは、避けたい。
 肺がんは、モルヒネで痛みが取れても、肺に息が入っていかない息苦しさは、
 多くの場合いかんともしがたい。そして膵臓がんは、その痛みが強烈な場合が多い。
 膵臓が炎症を起こすと、大変な痛みがある。

・「僕はまるで、不幸にねらいうちされているみたいだ」

・人間は死ぬに際して、自分の意志をどうやって通すべきなのでしょうか。

・看護婦仲間で、これだけはなりたくない病気の一つに糖尿病がある。
 長年の高血糖で血管が傷んでしまい、さまざまな合併症をきたしている方が多い。
 知覚が鈍り、足が腐ってしまった人。透析を受けるようになった人。目が見えなくな
 った人。

・「大丈夫?」その問いがいかに無意味であろうとわかっていても、息子さんは
 そうたずねることしかできない。

・十年前、初めての入院のときに付き添っていた夫は、今は彼女の傍らにいません。
 これは、長い病歴の女性にはありがちの経過

・人間の醜さ、弱さを否が応にもかいま見るこの仕事では、看護婦同士の
 内輪話は、欠かせないもの。すべてを心に秘めていては、気持ちのほうが続かない。

・嫌でも患者さんのプライバシーに立ち入らざるを得ない場面がままあるのです。

・日ごろ身内の介護をなすり合う場面を見ることが少なくない私たち

・患者さんは、自分の病気が何なのか、とストレートに聞いてくることはまずない。

・女性に多い慢性関節リウマチは、ほとんどの場合、苦痛は強くとも生命には
 関わらない病気。まれに生命を脅かす例があり、それを悪性リウマチという。
 その症状を抑えるために、長期にわたって使用するステロイドホルモンのために、
 顔が丸くなることをムーンフェイスという。

・人の弱さを受け止めるだけでなく、時にその弱さを見ないふりをすること。
 看護婦にとっては必要な態度。

・点滴を刺そうにも、枯れた身体には血管すら浮いてこない。

・しかし、職業的責任感から、誠実な医師ほど、一生懸命延命のための治療をしてしま
 いがち

・死ぬ人にとって死は哲学的。残されるものにとって死は現実的。

・口からものを食べることができない彼女は、点滴だけでその細くなった
 生命の火をともし続けていました。

・彼女の意識がなくなり、もう数時間であろうという時になって、夫が一晩彼女に
 付き添いました。しかしそのときも彼は腕時計をちらちらと見やっては、
 手持ちぶさたな風で、広くもない個室を行ったりきたり。彼は、看護婦に聞く。
 「まだですか?いつ頃ですか?」




ぼくは入院したことがない。大きな病院にかかった記憶もない。
だから、こんな本が必要だった。死についてよく考えさせられるから。

生と死に一番密接な職業の一つが看護師。
いつも自分には無理な職業だと思ってきた。だって、人の生きる喜び以上に、
死を見てしまうことがじぶんにとって、あまりにも重い出来事だと思うから。
だから、いつも病院で働く人には頭が下がる思いがある。


読んでみて、その思いはますます強くなった。
人間の醜いところを間近で見ることってどれほど辛いんだろうか。
ぼくみたいに、野菜と果物を売るみたいな仕事とは全く違う。
精神的にもひどく疲れるんだろうなぁ。
でも、それでも僕は看護師の仕事を楽しく思うし、誇りに思ってる、という女性を知っている。
それだけやりがいのある仕事なのは間違いないのだろう。


病院の中を満遍なく見学したような気持ちになった。
必要な本だと思う。



蒼い時:山口百恵

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山口百恵の21年間。


・さようならと決して言わなかった友達。
 いつでも帰って来いと言った友達。
 それなのに遠くなってしまった街。

・あの街に、これほどのあざとさが潜んでいたのだろうか。
 これほどの哀れさが匂っていたのだろうか。

・あの人(父)は、毎日夜になれば帰って来るという人ではなかった。
 帰って来るというよりは、やって来るといったほうがふさわしい人だった。

・「私はいい。けれど子ども同士を差別したことが許せない」

・娘を娘としてでなく、自分の所有している女を見るときのような動物的な目だった。

・父の目のなかに動物的な匂いを嗅ぎ取ったあの日、私の心にしるされた黒い染みは、
 ここでしるされたもうひとつの黒い染みと合致し、生涯拭いきれそうにない汚点とな
 って、私の心にやきついた。

・金銭で血縁を切る。

・涙ながらに「骨だけは拾ってほしい」と言ったあの人を、私は憎む。

・(ミラノにて)近代化されすぎた都会の真白いビルの中では、人々が呼吸をして生きて
 いるということが信じられないのに、この街の古い壁の中での人々の息吹きは、
 厚い壁を通り抜けて、街全体に染み付いているような気がする。

・私の記憶の中のあなたは、いつも背中を向けていました。朝早くから夜遅くまで、
 座りっぱなしで内職していたあなた。そんなあなたの背中は、何かに支えられて
 ピンと張り詰めた、華奢なくせにしっかりとした暖かな背中でした。

・当時は歌謡界全体がいわゆる「かわいこちゃんブーム」と称されていた頃で、
 流行っている歌といえば「天使」や「夢」や「花」がテーマになっているものばかり

・「あなたに 女の子のいちばん大切なものをあげるわ」『ひと夏の経験』
 インタビューの人間が必ず、唇の端に薄い笑いをうかべながら上目遣いで私を見て、
 聞くのだった。
 「女の子の一番大切なものって何だと思いますか」
 「処女です」、とでも答えて欲しいのだろうか。

・女性の体の細部にわたって生理というものが影響を及ぼしていることに気付いた時、
 私はあらためて自然の創り出したしくみの素晴らしさを感じた。

・野外ステージで歌っている私のスカートが突然の風で舞い、下着が露わになった
 写真を雑誌に掲載されたことがあった。
 その頃まだ十代だった少女の気持ちなど全く考えることもなく掲載したおとなたちの
 神経を疑った。芸能人だからーこの言葉ですべてが処理されてしまう。

・何だったのか覚えていないが、おそらく自分の未来というものを強すぎるほどの
 自信を持って見つめていたのだろう。

・中絶。世の”大人”と称する人たちの無責任な、性に対する逃げの姿勢

・みんな必死に自分のために生きている。

・クール、冷静沈着、年にふさわしくない落ち着き・・・それらは”芸能人・山口百恵”
 を語るときのパターン化された修飾語

・プライバシーとは、その人間が意志力で引いた境界線内の領域のことである。
 だからある人にとっては許せることでも、同じことがある人にとっては許せない

・恋のはじまりは、意外性の発見からー

・いつの間にか、その場だけを取り繕うことをしすぎて、本当のことを言う作業をしていない自分を恥じた。

・甘えることが下手で、気が強くて、無邪気にはなれなくて、何よりひとりの女として、
 愛される自信がなかった。

・彼が私を求めているときに、応えることができないという負い目は、予想以上に
 私を弱くした

・当たり前のことだが、結婚するからには一生添いとげたい。

・私は彼のためになりたかった。愛する人が最も安らぎを感じる場所になりたかった。

・人に裏切られても、決して自分は人を裏切るまい

・まず、他人の歌は決して歌わない。自分の曲ひとつ歌いこなせずに、
 他の人の曲や外国曲を歌えるはずはないと思う

・形式的なカーテンコールは、真実味が感じられなかった。
 全力を尽くし、心をこめれば、歌わずに幕を上げて拍手に応えるだけのカーテンコー
 ルでも、よいのではないだろうか。

・嫉妬をテーマにした歌『愛の嵐』

・無駄にお金を使うことほど、馬鹿なことはない。贅沢をしようと思えば、きりがない。





僕は彼女がアイドルだった当時を生きていない。
だけど、彼女の歌は、いま聴いても、いいなぁ、と純粋に思う。

現代の音楽にはない哀愁感というか、歌詞のおもしろさも相まって、むしろ今の時代新鮮に響く。



読みながら思ったのは、アイドルでありながらも、普通の人で、非常に芯のある人だということ。
いや、むしろアイドルだからなのか。

芸能界の嫌な面もすべて真っ当から受け入れて、乗り越えているような印象を受けた。
それは、ちゃんと自分を貫ける気持ちがあったからのように思う。
そういう面が、カーテンコールをやらない、であったり、裁判を起こしたりという行為につながったんだろう。



大きく、「出生」「性」「裁判」「結婚」「引退」「随想」とテーマが分かれているが、
「随想」は若干蛇足に思えた。前半のテーマたちが、彼女の心の中をすべて物語っているかのように思えたから。


いい本だった。かっこよかった。

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Hiro

Author:Hiro
読んだ本の記録。忘れたくない言葉。

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