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命 : 柳美里

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生と死。
強さと、弱さ。
その狭間で生きる。




・つきあうと執着が生まれて苦しくなるから

・重要なことを話さないことも嘘である

・彼は相も変わらず物語を紡いでいるだけなのだ

・生と死がくっきりとした輪郭を持って迫ってきたとき

・自分が吐いた大きな嘘の渦のなかで、なにかしらの真実を求めてあがいていることだけは
 理解できたが、虚空を両手で必死になって掻きまわしているとしか思えなかった。

・妻としてはいまの女性のほうがいいんでしょう、あなたを妻にしたいとは考えていないんだ。
 家庭を大事にするカサノヴァっていう役を気に入っているんだろうね。

・血の色をした復讐という文字が滲みあがった

・この世に生まれて、色んなひとに出逢っても、自分の子どもに巡り逢えない人ほど淋しい人はいません。

・知性や才気だけでなく、魂というしかない静謐(せいひつ)な精神を感じさせる女性

・悔いの残らない余生

・わたしは死を受容しつつ、なお、生の可能性を信じて治療をつづけることが、命と正面から向き合う道
 だと考えている

・強くなるから、などとはとてもいえない。私の意気地のなさを認めてほしかった。

・気取りも衒い(てらい)もない独特の文章でつづられていて、読んだあとにかならずうれしくなる。

・うっすらと偽善の埃がかぶっているように思え

・わたしはなにかに逼迫(ひっぱく)すると、・・・すぐに死のイメージを思い浮かべてしまう、
 まともな人間からすると胸糞悪くなるにちがいない甘えの世界

・苦痛で充たされた生

・わたしは護られたい、救われたいという自分の願望に溺れていた。

・必死になって世界と呼吸を合わせている赤ん坊

・東は両腕をあげ、助産婦がその腕のなかにそっと赤ん坊を乗せた。命の重さ。

・わたしたちの会話には起伏がなく、温度もなかった

・幸福は状態ではなく、瞬間のなかにしか存在しない、一瞬一瞬煌いて消え去るもののような気がする

・ほうとうはすべてのひとの命が日々失われているというのに、そのことに鈍感になっている。いや、
 鈍感にならなければ生きていけないのだ。







著者は強い。
不倫の末、その男性の子どもを身ごもり、それをきっかけに別れが訪れる。
それでもその子どもを生み、癌に冒された元恋人とともに生きようと決意する。
柳さんの赤ん坊と同じように、柳さん自身、必死に現実に呼吸を合わせているようだった。


著者の母親の言葉。
「この世に生まれて、色んなひとに出逢っても、自分の子どもに巡り逢えない人ほど淋しい人はいません。」
心に残った。
同性愛者の人間はやはり淋しい生き物なのだろうか。
自分の子どもを持つことを諦めざるを得ない今の日本の環境、世界の状況を嘆き嗤うしかないのだろうか。



命の重み、なんて容易く言えるが、どのくらい重いのか今までよく分からなかった。
だがその重みは、両手で計測できるんだと初めて気付かせてくれた。


ありがとう。

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誰よりも美しい妻 : 井上荒野

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バイオリニストで、好色の夫。夫の不倫を知りながら冷静でいられる完璧な妻。



・7月のはじめの陽は夏の光というにはまだどこか水っぽくて、レモンジュースのようだ。

・惣介の孤独。だけど、私が何よりも愛しているのはきっとそれなんだわ。

・天井から降ってくる気配には2種類あって、それは「海」と「森」だ。

・こんなとき園子は、ほかの女のように「ええっ?」とか「ひどい!」とか、いちいち嘆いてみせない。
 告げられたことを素早く咀嚼してから、適切なことを言う。

・不当に傷ついたのはどちらだろう。

・まるで、セックスそれ自体が、もう一人の女であるかのように。

・美しさなんていうものは、自分にとって必要なただ一人の男のためだけにあればいいのだ

・まったく私は、惣介を愛さずにはいられない。

・うんざりすることに、私はいまだあのバカ男を愛している。
 そうして、いつものように、ほとんど同時に、あのバカ男と別れて本当によかった、と考える。

・ずっと額縁の中に閉じ込められているみたいだった。それも、日曜画家が描いたみたいな、
 パースもデッサンもくるっているへたくそな絵の中に。

・自分の声がどこかべつの場所から聞こえてくるようだ。

・マイナスにマイナスをかけてプラスに転じようとすること

・錆びて黒ずんだ指輪みたいに、遥そのものが醜い。

・その女にぞっこん夢中であることを、表情や態度の端々にポスターみたいに貼り付けて。

・徹底的に予想外

・自分が生きながら埋葬されているような気分になった。

・降り積もった埃に似た淋しさが体の中で舞い上がり、何か別のものに形を変えて、
 再び体の底に降り積もるのを待った。

・この人、サナギになってるんだわ。

・ちゃんと闘い、神様か、悪魔か、あるいはそういう名前ではない、何か圧倒的な存在に向かって
 祈り続けていたのだ。



一般的とはいわないが、本能で生きる男は、恋愛でも本能に従って奔放だと思う。
妻を愛して、当然のように他の女も並行して愛する。
悪いことだと世間からいわれていようとも、愛してしまうものは仕方のないことだ、そんな考えがあるんだろう。


反面、妻。
基本、夫の不倫に耐える、または怒り、狂う。
だが、この小説の主人公ともいえる妻は、ただ冷静に夫の不倫をサポートするかのごとく、振舞う。
冷静に、的確に、愛すらもって。


物語のラストに妻の本当の気持ちが分かる。ぞっとした。
そしてこの人、人間だったんだ、と思った。





不倫を肯定する人、できる人の気持ちをもっと知りたくなった。


男 : 柳美里

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男の「からだ」「部位」で想い出を綴っている著者の物語。


・孤独なダンスを演じているのは女の爪だ

・男の爪は踊らない。伸びたら切る、ただそれだけ

・男も女も自分が幻想を持てるものにしか執着しないし、執着するものに幻想を駆り立てられる

・男は5秒で、女は8秒で目の前の異性が自分に相応しい恋愛対象かどうかを見極められる

・男性器の名称をぴたりと文章におさめるのは至難の業だ。
 この国の男のものにペニスはそぐわない気がする

・合コン・・・たがいを値踏みしながら交際する相手を見つけるというやりかた

・わたしは別段不快ではなく、だれかの代理として存在しているこころやすさを感じ

・頽廃と軽薄は美しい肉体に宿る

・口は「顔の戦場」

・なぜだろう、キスをすればするほど不安に襲われるのは?

・腕は男のからだのなかでもっとも幸福なイメージが湧く場所だ

・目覚めた瞬間に溶け始める夢の輪郭

・腕そのものに性的魅力はない

・わたしは眠ろうとするたびに腕を持て余す。

・男の腕は天秤にも似ている。

・僧侶が坊主頭にするのは簡素な生活をするという決意で、身の回りのことに手間ひまを
 かけないため

・性感帯などないという説がある。

・快感を得ようとするからこそ性的興奮に達するという説は、案外真実に近いかもしれない

・十本の指が溶け合ってひとつのてのひらになったように感じた

・男は、女が想像する以上にペニスに対する思い入れと思い込みが激しいのではないか

・あたかもペニスが自分と等身大であるかのよう

・女にとって、ペニスはその男の一部分に過ぎないのに、ペニスがすべてだと考えている男も少なくない

・ペニスそのものに快感の受容体が備わっていると思い込んでいるのではないだろうか。
 快感は脳で感じるものだということを理解していない男は大勢いる気がする。

・男に鍵を渡すのはこころとからだを相手にゆだねたからで、
 セックスとはまさに男にこころとからだを開く行為。
 女にとって、ペニスは、鍵の暗喩なのかもしれない。

・たがいの内側に入り込んで同調するような温もりにあふれた激しい抱擁

・男の乳首はいったい何のために存在しているのか。
 何の役割もないものをからだにつけて、その存在を奇異に感じないというのも不思議なことだ。

・この部屋に残っているのは、彼に棄てられたわたしだけだ。

・「おいしい」と抑揚をつけずにいって、わたしは彼に対する不信感と疑いを咀嚼し味わった

・わたしが自分の思いに裏切られたのだ

・わたしは懸命に顔に貼り付けていた笑いがすべて落ちていくのを感じた。

・追いかけることも逃げることもできない屈辱で歪んだ顔を本で隠していたのだ。

・あなたは護りたいものを護り、助けたいものを助けて生きていってください。
 今後は、どんな状況に陥っても近況報告の類はしませんし、おそらくこの世であなたとわたしが
 再会することはないでしょう。はじめてきっぱりといえます。さようなら。

・性は文学に残された最後の荒野






著者の男性経験がこれでもかと赤裸々。
そこに好感が持てるし、真実で生々としているから共感できた。


そもそも体のパーツ、についてここまで考えたことがなかったので、
非常におもしろく読める。


良書。



ゲーテ格言集 : 高橋健二 編訳

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どうすればゲーテのような人間になれるのか。
もはや人間を超越している。




・考える人間のもっとも美しい幸福は、究め得るものを究めてしまい、
 究め得ないものを静かに崇めることである。

・自発的に頼るということはこの上なく美しい状態である。

・性急にやらねばならぬこともたくさんありますが、
 節度を保ち、不自由の忍ばねば、手に入れることのできぬものもあります。
 徳はそれだと申します。
 徳とは縁続きの愛も同様です。

・情熱は欠陥であるか、美徳であるかだ。
 ただどちらにしても度を越えているだけだ。
 大きな情熱は望みのない病気。

・好意は永久に勝利を告げるだろう。

・人間は、なんと知ることが早く、おこなうことの遅い生き物だろう。

・人間は何を滑稽だと思うかということによって、何よりもよくその性格を示す。

・すべての階級を通じて、一段と気高い人はだれか。
 どんな長所を持っていても、常に心の平衡を失わぬ人。

・より高い要求が、努力する精神をたえず真理へ静かに引き上げる。

・誤りは表面にあるので、片付けやすい。真理は深いところにおさまっている

・誤りも、われわれが若いうちは、きわめて結構だ。ただそれを年をとるまで引きずって
 行ってはならない。

・だれも他人にーほんとにおかしいことだがー迷う権利を許さない。

・ある欠点は個人の存在には必要である。

・頭がすべてだと考えている人間の哀れさよ!

・内面を熱望するものはすでに偉大で富んでいる。

・知るに値せぬものや、知り得ぬものに携わることによって、学問は非常に阻止される。

・自然の絶頂は愛である。愛によってのみ人は自然に近づく。

・自然は常に正しく、誤りは専ら私のほうにある。
 自然に順応することができれば、事はすべておのずからにしてなる

・若いときは、興味が散漫なため忘れっぽく、年をとると、興味の欠乏のため忘れっぽい。

・感覚は欺かない。判断が欺く。

・あらゆることにおいて公平ということは愚かしい。
 それは自我を破壊する

・人間の生活やその一生の運命をきめるものは、一瞬間のほかありません。

・仕事の圧迫は心にとってきわめてありがたいものだ。
 その重荷から解放されると、心は一段と自由に遊び、生活を楽しむ。
 仕事をせずにのんびりしている人間ほどみじめなものはない。
 そんな人はどんなに美しい天分もいとわしく感じる。

・不幸は知性でも理性でも癒せない。時間がかなり癒してくれる。
 固い意志の活動は一切を癒すことができる。

・気分がどうのこうのと言って、なんになりますか。
 ぐずぐずしている人間に気分なんかわきゃしません。

・きょうできないようなら、あすもだめです。

・利己的でない好意的な行いが、最も高い美しい利子をもたらす。

・人間は現在を貴び生かすことを知らないから、よりよい未来にあこがれたり

・ユーモアは天才の一要素

・気のいい人たちは、読むことを学ぶのにどのくらい時間と骨折りがいるものか、知らない。
 私はそれに80年を費やしたが、今でもまだ目指すところに達したとはいえない。

・苦難も過ぎてしまえば、甘い。

・孤独はよいものです。自分自身と平和のうちに生き、何かなすべきしっかりしたことがあれば。

・個人は何者かに達するためには、自己を諦めなければならないということを、
 だれも理解しない。

・自負し過ぎないものは、自分で思っている以上の人間である。

・多く知るにつれ、次第に疑いが生じてくるもの。

・知恵を大げさに自慢し見せびらかすのをやめよ。謙遜こそゆかしいもの。

・豊かさは節度の中にだけある。

・有能なものが、ほんものであったら、あらゆる時代を超えて働きを及ぼす。

・人生は色どられた影の上にある。

・はるかな世界と、広い生活を、
 長い年々の誠実な努力で、
 絶えず究め、絶えず探り、
 完了することはないが、しばしばまとめ、
 最も古いものを忠実に保持し、
 快く新しいものをとらえ、
 心は朗らかに、目的は清く、それで、一段と進歩する。

・虹だって15分も続いたら、人はもう見むかない。

・経験したことは理解した、と思い込んでいる人がたくさんいる。

・適切な答えは愛らしいキスのようだ。





恐ろしく完璧な思想。
つめの垢を煎じて飲ませてほしい。

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Hiro

Author:Hiro
読んだ本の記録。忘れたくない言葉。

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