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チョコレート革命 : 俵万智

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97年初版。
今は2013年だけど、ぜんぜん古臭く感じることのない、瑞々しいままの短歌たち。




・なくてもいいものにこだわる週末を探してやまぬホースラディッシュ

逢うたびに抱かれなくてもいいように一緒に暮らしてみたい七月

・抱かれることからはじまる一日は泳ぎ疲れた海に似ている

・骨の髄味わうためのフォークありぐっと突き刺してみたき満月

・チョコを買うように少女ら群がりて原宿コンドマニアの灯り(コンドーム専門店)

忘れるという知恵を持つこの国の平和、それでも平和を愛す

・水密桃の汁吸うごとく愛されて前世も我は女と思う

・一枚のタオルケットを分けあえばつぼみの中の雌しべになった

・やさしすぎるキスなんてしてくれるからあなたの嘘に気付いてしまう

「気分」という割り切れぬ語で返事する我を許せよ我の気分を

・誰かさんの次に愛され一人より寂しい二人の夜と思えり

・子どもとは何をおいても笑わねば、笑わねばならぬ生き物と知る

・「結婚することになったよ」「なったんじゃなくてすることに決めたんでしょう」

・一億総中流となり中流の我ら貧富の誤差にこだわる

抱きあわず語りあかせる夜ありてこれもやさしき情事と思う

・祈るとき人は必ず目を閉じて何もなかったように立ち去る

・「二人とも愛しているんだ」腕ずもうのように勝負がつけばいいのに

・「愛は勝つ」と歌う青年
 愛と愛が戦うときはどうなるのだろう

・男ではなく大人の返事する君にチョコレート革命起こす


・一人は寂しい二人は苦しい

・ウォッカオレンジのような二時間

・焼肉とグラタンが好きという少女よ私はあなたのお父さんが好き



あとがき
・私は出会いというものを、このうえなく大切に思っている。
 だって、ほんの百年ずれていたら、二人は会えなかったのだから。

恋には、大人の返事など、いらない。君に向かってひるがえした、甘く苦い反旗。
 チョコレート革命とは、そんな気分をとらえた言葉だった。

・大人の言葉には、摩擦を避けるための知恵や、自分を守るための方便や、相手を
 傷つけないためのあいまいさが、たっぷり含まれている。そういった言葉は、
 生きてゆくために必要なこともあるけれど、恋愛の中では、使いたくない種類の
 ものだ。





俵さんはこの頃不倫をしていて、それは妻子ある人だったということが赤裸々に伝わってきた。赤裸々に。

有名な人がこうやって惜しげもなく、自分の不倫の体験を詩にし公表するのにためらいはなかったんだろうかと
考えたけど、ほかの本で「歌は心が揺れなけれ生まれない。」とおっしゃっていたので、
そういうことなんだろうなぁ。
詩にすることで、何かしら消化できるものがあるのだろうと思う。

この本が出た頃、きっと世間からの不倫に対する批判もあったのだと推測するが、
それを承知で出しているのだから後悔はまったくないのだろう。
そういうところが、素敵。ありのままで。







・「愛は勝つ」と歌う青年
 愛と愛が戦うときはどうなるのだろう

この短歌が一番グッと来た。
きっとそんな場面が人生の中で何度かあるはずだから考えさせられた。

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もうひとつの恋 : 俵万智+浅井愼平

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恋の短歌に、想像力を喚起する写真。



・連絡のとれないことが
 寂しくて
 たいした用などないのだけれど

・1週間ぶりにあなたの声を聞く
 土曜を何と名づければいい

・「私から電話します」と言って切る終りにできない想い切るため

いま愛してる

・もう次に会う日のことを考えている目の前に君がいるのに

・不機嫌の理由が見えない
 君のそば
 明るいだけがとりえの私

・「雪」は「雪ぐ(すすぐ)」
 私の何を雪ぐため
 みぞれ静かに降ってくる朝

・俺とおまえが俺たちになる


歌は心が揺れなけれ生まれない
 恋は、心の揺れそのもの。恋は、歌の種そのもの。





俵さんの恋愛の詩はいつだって素敵だ。



この本で一番印象深かったのは、「いま愛してる」っていう言葉。

いま。
当たり前だけど、「過去に愛してた」でも「これからも愛してる」でもなく、今。
今愛すことができたらそれでいい、過去も未来も見ないで、今、それだけでいいんだ、って。



今を愛せる恋愛はいいなぁ、と思った。
一直線に愛せそうだから。







恋文 : 俵万智+荒木とよひさ

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秘密の恋の往復。




・ボクの夏はそこでぷっつりと途切れ、
 そこからの夏はただの夏

・雪は突然すべての音を消してくれる。

・がんじょうな汽車さえもためらいがちに

・いつか失うものという前提で、私が輝いているのだとしたら、
 それはとても悲しいことです。

・ほんの小さなあしただけ

・家庭という型に、心をはめ込んでいる自分の姿が見えません

・「もし」たちからは、何も生まれてきません。

・絵本。子どもが、初めて出会うのに近い言葉

人は花を見るときに花の美しさだけを見てしまい、花に隠れた葉はあまり見ない。
 薔薇には緑の葉があって初めて美しく、その葉がなかったらつまらないただの花

・生活の贅沢や便利とかいうものは、心の豊かさを削り取りますが、貧しさの中の
 生活は、物の大切さ、ありがたさや分け合う気持ち、そして心の灯を灯すものだと

・アメリカの女性文学者が、愛は3年で死ぬと言っています。
 愛が死に、そしていつか愛情という型に変わり、普通の男と女になり、
 時という大きな手のひらの中に包まれ、良き夫婦で晩年を迎える

・「暑いですね」が、日本の標準のあいさつみたいな、今日このごろ

・手触りのある恋

・「アタシは必ず死ぬ。だけど、必ず死ぬっていうことでは、アンタも同じなのよ。
  ほら、その交差点を歩いている人たちだって、百年後には全員必ず死んでいる。」
  百年後には、誰もいないーと思うことは、絶望ではなく、希望。
  百年後には愛さえあとかたもなくなっているかと思うと、なぜか爽快

秘め事という言葉のニュアンスは、秘密(シークレット)とはどこか違う奥行きがある。
 日本人ならではの言葉

・この世で、誰よりもあなたのことを知っている人、というより、ある意味、
 誰よりもあなたの心を占めている人

・演劇の言葉というのは、その日その場で消えていく
 






妻子ある男と、女流詩人の不倫。そこで交わされる手紙が素敵。

この女性は、決して男が妻と別れないことを享受できているのがすごいなぁと思った。
嫉妬の念すら愛おしくなるような、ゆるやかな愛し方だと思う。
それができる人って現実には、なかなかいないんじゃないだろうか。

でも、もし文中にあった

百年後には愛さえあとかたもなくなっているかと思うと、なぜか爽快

と思えたら、ぼくにでも何だってできそうな気さえしてしまう。



この本を読んでから、
人から妬まれるような恋をしてもいいのかも、なんて思ったり。
周りの人を傷つけても、自分が苦しくなっても、いつかは皆いなくなるのだから。

本能のままに生きてみたいものだと思う。







旬のスケッチブック : 俵万智 

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12の季節の言葉のスケッチ。




1月大根
・ぴっちぴっちの大根が、八百屋さんの店先にどーんと積まれるようになると、
 「おお、冬だ!」という気分になる。

・緑の葉っぱがわさわさついていれば、なお嬉しい。これで今日はほうれん草を
 買わなくてすむ。

・さっと茹でて、おひたしにしてもおいしいし、細かく刻んで炊きたてのごはんに
 混ぜれば、目にも鮮やかな「大根めし」

・買い物の袋から葉っぱがぴょこんとはみ出す風情もいい。

・「みぞれ和え」というネーミングをした人に、心から拍手。
 唐辛子と一緒におろして作るオレンジ色の「もみじおろし」も、素敵な命名だ。

・「ばっさりと」には、内に秘められた激しい思いが感じられる。
 「切る」ではなく「斬る」。迫力満点だ。

・大根おろしを作るとき、剥いた皮を私は、短冊のように切って、ごま油としょうゆを
 同量ぐらいずつ混ぜたタレにつけておく。できれば鷹のつめ、なければ一味か
 七味唐辛子を、ぱっぱっぱ。すると翌日には、歯ごたえばりばりの、おいしい
 漬物になっている。


2月チョコレート
・どこかにチョコレート畑というのがあって、2月にいっせいに収穫されるのでは
 ないかと思ってしまう。

・「いつもさっさと帰っちゃう男の子がさ、なんとなく放課後もぐずぐずしてたり」

・チョコレートを溶かしたものがホットチョコレートではなく、歴史的にいうと逆。
 スペインの人が、カカオの粉に砂糖と牛乳を加えて飲み物を発明。
 それから200年後に、それを固めてチョコが作られた。


3月菜の花
・もともと菜の花の「菜」は、副食物を総称する「肴(な)」や、食用にする魚の
 「魚(な)」と同じ語源なのだそうだ。早い話が「おかずの花」

・さっと茹でて芥子あえにするのが私は一番おいしいと思う。

・ほろ苦いの「ほろ」が大切なのだ。そしてこの微妙な感覚は、
 日本人独特のもののような気がする。

・昆布ではんく、ぬかの入った袋で押しをするとまた違った風味になる。
 つぼみを、豆腐などと一緒におすましにするのもいい

・献立に、何かひとつでも季節を感じさせるものがあると、会話がはずむ。



4月新キャベツ
・春を感じるさせる野菜は?
 私は迷わず新キャベツと答える。このふわふわ感がいかにも春である。

・古キャベツでは、いかにもバリバリ固くてまずそうだ。ところが冬キャベツと
 呼んでやると、落ちついたあったかい感じがする。

・煮ても焼いてもおいしく食べられる。青々とした外の葉っぱは、ロールキャベツは
 もちろんのこと、炒めると一層甘みを増すし、中のやわらかい部分は生食に最適。
 サラダや即席漬けに活躍する。中心の巻いているところはたっぷり刻んで餃子に
 入れると、とろとろっとしてほんのり甘く、やさしい味になる。

・外の葉っぱ、中の葉っぱ、中心部分ー一個の中にもそれぞれの使い道があるのが、
 いい。場所によっていろんな料理のストーリーが考えられる。こういうのを
 「ドラマ野菜」と、私は勝手に呼んでいるのだが、キャベツはその代表選手でもある。
 
・葉っぱ一枚で、一日に必要なビタミンCがOK
 野菜の中ではたんぱく質も多いほうです。


5月いちご
・イチゴ大福。あんの中にすっぽり隠してしまうところが、意表をついている。見てく
 れのためではなく、味のためのいちごなのだ、とでもいうように。

・ひな祭りやクリスマス、誕生日などに欠かせないということで、最近では
 イベントフルーツと呼ばれているそう


6月あお梅
・「あの色」としか言いようのない柔らかいやさしい黄緑の青梅が、ざるに盛られて
 並び始めると、そろそろ梅雨入りだな、と思う。梅の雨、とはよく言ったものだ。
 東北地方などでは、梅雨の終わりを思わせるのが、あの黄緑なのだそうだ。

・氷砂糖。ゆっくりゆっくり溶けてくるお菓子の原石は、私にとってはダイヤの原石


7月トマト
・最盛期に完熟し、栄養分もしっかり育成した上で木からもがれたものは、「追熟」の
 ものより、3倍のビタミンCが含まれているそう

・ウキウキしているときは、八百屋さんの野菜も何か、みんなウキウキしている
 ように見える。逆に気持ちが滅入っているときには、どれもこれも、暗い野菜に
 見える。


8月氷
・いちごやメロンなどのシロップのけばけばしさも、暑さでぼーっとした頭には、
 かえって刺激的でいい。夏は原色が似合う季節

・自分にとっては辛いこの失恋も、相手にとってはひとつのエピソードに過ぎない


9月きのこ
・「たけやー、さおだけー」と威勢のいい声でやって来る竿竹売り。私はずっと
 「竿だけ=オンリー竿」の意味だと思っていた

・煮物や和え物は、単品よりも何種類かのきのこを使ったほうが、それぞれの風味が
 生きるそう。


10月牡蠣
・「どんなに嫌いなものでも、3個は食べなくてはいけません」

・牡蠣は、栄養的にも大変すぐれていて、ヨーロッパでは「海のミルク」と呼ばれる。
 「畑のミート」は大豆。


11月落ち葉
・「木は黙っているから好きだ
 木は歩いたり走ったりしないから好きだ
 木は愛とか正義とかわめかないから好きだ」

・飴いろのもみぢ、というのがまた渋い。赤や黄色、といった派手な色彩ではなく、
 重ねられたときを感じさせる、こっくりとした深い色。


12月ケーキ
・ショートケーキの「ショート」が、そもそもどこからきているのか知らないので
 決めつけることはできないが、なんだか変だ。

・ブッシュ・ド・ノエル=クリスマスの薪という意味。丸太を燃やした灰が、
 雷や火事よけのおまじないになるというリトアニアの神話がもとになっているそう。





著者の感性はやっぱり違う。
平凡なものの彩り方が違うと思う。
人が気付かないような小さな幸せさえ、残らず掬い上げるかのような感性には脱帽。


野菜と果物を売っている人間なので、とってもおもしろく読ませていただいた。
もちろんそうでない人も、楽しく読めると思う。


日本語の妙。
こういう本を読むと、日本に生まれてよかったと本当に思う。
感謝。


サラダ記念日

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いわずと知れたベストセラー。手にとってみました。

若いからこそ書ける詩だったり、共感できる部分がたくさんあり、
そういうところが、多くの人に受けたのかなぁ、と思う。



以下、個人的に好きなものを抜粋。

・寄せ返す波のしぐさの優しさにいつ言われてもいいさようなら

・左手で君の指のひとつひとつずつさぐる仕草は愛かもしれず

・午後4時に八百屋の前で献立を考えているような幸せ

・1年は短いけれど一日は長いと思っている誕生日

・「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ

・我だけを想う男のつまらなさ知りつつ君にそれを望めり

・何してる?ねぇ何を思ってる?問いだけがある恋は亡骸

・いつもより1分早く駅に着く 1分君のこと考える

・愛してる愛してない花びらの数だけ愛があればいいのに

・明日まで一緒にいたい心だけホームに置いて乗る終電車

・なんでもない会話なんでもない笑顔なんでもないからふるさとが好き

・もうそこにサヨナラという語があって一問一答式の夕暮れ




解説を見ると著者の20歳のおわり頃から24歳までにできた詩をまとめたものだそう。

自分と同じ齢の人が、鋭い感性をもって、日常の普遍的なことをすばらしく彩っていくことに感銘した。

また、5・7・5・7・7という限られた字数の中で、こんなに豊かに想いを語ることのできる短歌を見直した。
自分も小学校のころやった記憶があるが、えらく不自然なものを作っていたと思う。
ちょっとまたやってみたくなった。

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Hiro

Author:Hiro
読んだ本の記録。忘れたくない言葉。

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