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魂 : 柳美里

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命 四部作の 第二幕。

著者、その子ども丈陽、そして元恋人である東氏。
3人で2年間暮らすために奔走するその姿。有様。



・彼の脚にしがみつく夢をみた、ということにあらためて驚き、ショックを覚え、屈辱
 感でいっぱいになった。

・今度こそどんな夢も入り込む余地がないほど疲れ果てていた。

・わたしは願いを握りしめ過ぎているのだろうか。

・長持ちするもので部屋のなかを埋め尽くせば、東の命も長くなるような気がした

・赤ちゃんの唇がこんなに赤くてきれいだとは思わなかった

・微笑みが顔から消えても、出遭った瞬間の微笑は傷痕のように心に残っている。
 微笑みは約束だと思う。微笑みを交わした瞬間、ひとは目の前の相手となにがしかの
 約束を結ぶのではないだろうか。

・東は微笑むことで、生きることを希むのではなく、ただ尊んでいるように見えた。

・丈陽とわたしは共に生きていく運命にあるのだが、決してよりかかってはならない。

・淋しさにのしかかられて、わたしの精神は地面すれすれまで斜めになっている。

・医者が技術を身につけるのは当然のことだけど、技術以上に言葉を鍛えるべきだ。

・わたしは生まれてはじめて、夫に生活費をもらい、家事と育児だけに専念できる主婦
 を羨んだ。

・過去を共有すると、未来にも手を伸ばしたくなる。

・わたしは現実よりも希望を選んでしまった。

・混乱の渦のなかで、  彼の言葉にしがみつき、実際には小枝を握りしめていただけ

・自分に対する疑いを含まない確信は必ず過ちを犯す。
 確信とは、疑いの果てに揺らぎながら存在するものでなくてはならないのではないだ
 ろうか。

・お香典治療というのは不必要な延命措置のこと

・考えはひとつ積むたびに崩れてしまう。

・彼に対する感情は幾重にも堆積している

・隙があれば、わたしは彼のことを考えている。

・コップを倒したように涙があふれ出た。




未婚の自分には、赤ん坊を持つ出合いも今後ないと思っているが、
命を支えることの素晴らしさみたいなものを、この本から教えられた。
愛があるからこそ、人は支え合えるんだろう。

著者の元恋人の男性(丈陽君の父親)には、正直うんざりするが、
男とはそういうものかもしれない。実際、そういう人間にも出会ったことがある。
遠藤周作の本にもあったが、父親、夫という立場より、常に「男」という感覚が一番上にくるのが、
男性であるから、女性とのズレがあるのは、仕方のないことだが、それでもあまりの無責任さに、
読んでいて悔しくなる。


そんな男がのうのうと世間には生きているのかと思うと、本当に嫌気が差すのだが、
自分もそうなる可能性があることは否定できない。男だから。
愛というものが人を変える力は計り知れず、
深くなれば深くなるほど、どんどんと人は変わっていく。良くも悪くも。


癌治療をしている人間に出合ったことが一度もない自分は、幸運ともいえる。
東氏の体調について読んでいると、こんなにも苦しいものなのかと、同情の念がよぎる。
同情しかできない。

著者の、できることは全部やろう、という意思がとても好き。
崩れそうになる感情の中でも、しっかりと根が張っている彼女の思考には敬服する。

今後、自分の人生の中で、癌を患った人に出合うだろう。
そのときは、著者のように、支えてあげたい。
祈るより、支えてあげたいと思った。


何を書いてるのか分からなくなったが、
言いたかったのは、この本からの一番の印象は「支える」という言葉。
とても素敵な日本語だと思った。

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命 : 柳美里

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生と死。
強さと、弱さ。
その狭間で生きる。




・つきあうと執着が生まれて苦しくなるから

・重要なことを話さないことも嘘である

・彼は相も変わらず物語を紡いでいるだけなのだ

・生と死がくっきりとした輪郭を持って迫ってきたとき

・自分が吐いた大きな嘘の渦のなかで、なにかしらの真実を求めてあがいていることだけは
 理解できたが、虚空を両手で必死になって掻きまわしているとしか思えなかった。

・妻としてはいまの女性のほうがいいんでしょう、あなたを妻にしたいとは考えていないんだ。
 家庭を大事にするカサノヴァっていう役を気に入っているんだろうね。

・血の色をした復讐という文字が滲みあがった

・この世に生まれて、色んなひとに出逢っても、自分の子どもに巡り逢えない人ほど淋しい人はいません。

・知性や才気だけでなく、魂というしかない静謐(せいひつ)な精神を感じさせる女性

・悔いの残らない余生

・わたしは死を受容しつつ、なお、生の可能性を信じて治療をつづけることが、命と正面から向き合う道
 だと考えている

・強くなるから、などとはとてもいえない。私の意気地のなさを認めてほしかった。

・気取りも衒い(てらい)もない独特の文章でつづられていて、読んだあとにかならずうれしくなる。

・うっすらと偽善の埃がかぶっているように思え

・わたしはなにかに逼迫(ひっぱく)すると、・・・すぐに死のイメージを思い浮かべてしまう、
 まともな人間からすると胸糞悪くなるにちがいない甘えの世界

・苦痛で充たされた生

・わたしは護られたい、救われたいという自分の願望に溺れていた。

・必死になって世界と呼吸を合わせている赤ん坊

・東は両腕をあげ、助産婦がその腕のなかにそっと赤ん坊を乗せた。命の重さ。

・わたしたちの会話には起伏がなく、温度もなかった

・幸福は状態ではなく、瞬間のなかにしか存在しない、一瞬一瞬煌いて消え去るもののような気がする

・ほうとうはすべてのひとの命が日々失われているというのに、そのことに鈍感になっている。いや、
 鈍感にならなければ生きていけないのだ。







著者は強い。
不倫の末、その男性の子どもを身ごもり、それをきっかけに別れが訪れる。
それでもその子どもを生み、癌に冒された元恋人とともに生きようと決意する。
柳さんの赤ん坊と同じように、柳さん自身、必死に現実に呼吸を合わせているようだった。


著者の母親の言葉。
「この世に生まれて、色んなひとに出逢っても、自分の子どもに巡り逢えない人ほど淋しい人はいません。」
心に残った。
同性愛者の人間はやはり淋しい生き物なのだろうか。
自分の子どもを持つことを諦めざるを得ない今の日本の環境、世界の状況を嘆き嗤うしかないのだろうか。



命の重み、なんて容易く言えるが、どのくらい重いのか今までよく分からなかった。
だがその重みは、両手で計測できるんだと初めて気付かせてくれた。


ありがとう。

男 : 柳美里

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男の「からだ」「部位」で想い出を綴っている著者の物語。


・孤独なダンスを演じているのは女の爪だ

・男の爪は踊らない。伸びたら切る、ただそれだけ

・男も女も自分が幻想を持てるものにしか執着しないし、執着するものに幻想を駆り立てられる

・男は5秒で、女は8秒で目の前の異性が自分に相応しい恋愛対象かどうかを見極められる

・男性器の名称をぴたりと文章におさめるのは至難の業だ。
 この国の男のものにペニスはそぐわない気がする

・合コン・・・たがいを値踏みしながら交際する相手を見つけるというやりかた

・わたしは別段不快ではなく、だれかの代理として存在しているこころやすさを感じ

・頽廃と軽薄は美しい肉体に宿る

・口は「顔の戦場」

・なぜだろう、キスをすればするほど不安に襲われるのは?

・腕は男のからだのなかでもっとも幸福なイメージが湧く場所だ

・目覚めた瞬間に溶け始める夢の輪郭

・腕そのものに性的魅力はない

・わたしは眠ろうとするたびに腕を持て余す。

・男の腕は天秤にも似ている。

・僧侶が坊主頭にするのは簡素な生活をするという決意で、身の回りのことに手間ひまを
 かけないため

・性感帯などないという説がある。

・快感を得ようとするからこそ性的興奮に達するという説は、案外真実に近いかもしれない

・十本の指が溶け合ってひとつのてのひらになったように感じた

・男は、女が想像する以上にペニスに対する思い入れと思い込みが激しいのではないか

・あたかもペニスが自分と等身大であるかのよう

・女にとって、ペニスはその男の一部分に過ぎないのに、ペニスがすべてだと考えている男も少なくない

・ペニスそのものに快感の受容体が備わっていると思い込んでいるのではないだろうか。
 快感は脳で感じるものだということを理解していない男は大勢いる気がする。

・男に鍵を渡すのはこころとからだを相手にゆだねたからで、
 セックスとはまさに男にこころとからだを開く行為。
 女にとって、ペニスは、鍵の暗喩なのかもしれない。

・たがいの内側に入り込んで同調するような温もりにあふれた激しい抱擁

・男の乳首はいったい何のために存在しているのか。
 何の役割もないものをからだにつけて、その存在を奇異に感じないというのも不思議なことだ。

・この部屋に残っているのは、彼に棄てられたわたしだけだ。

・「おいしい」と抑揚をつけずにいって、わたしは彼に対する不信感と疑いを咀嚼し味わった

・わたしが自分の思いに裏切られたのだ

・わたしは懸命に顔に貼り付けていた笑いがすべて落ちていくのを感じた。

・追いかけることも逃げることもできない屈辱で歪んだ顔を本で隠していたのだ。

・あなたは護りたいものを護り、助けたいものを助けて生きていってください。
 今後は、どんな状況に陥っても近況報告の類はしませんし、おそらくこの世であなたとわたしが
 再会することはないでしょう。はじめてきっぱりといえます。さようなら。

・性は文学に残された最後の荒野






著者の男性経験がこれでもかと赤裸々。
そこに好感が持てるし、真実で生々としているから共感できた。


そもそも体のパーツ、についてここまで考えたことがなかったので、
非常におもしろく読める。


良書。



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Hiro

Author:Hiro
読んだ本の記録。忘れたくない言葉。

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