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にんじん (ルナール ジュール)

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あのすばやい耳

眼の中に、火の塊りができたように

あの子は、頭の中で何か考えてると、お尻のほうは、お留守ですよ。

怠け者の兄貴、フェリックスは、辛うじて学校を卒業した。 彼は、のうのうとし、ほっとする。

そして、街で紙片を拾うように、彼の心臓をつかむ。 揉む。皺くちゃにする。丸める。握り潰す。 やがて、にんじんは、これが自分の心臓かと思う。わずかに、飴玉の大きさだ。

彼の干からびた眼が、涙でいっぱいになる。

感動の最初の火花

狡そうな灰色の眼

蚯蚓はきたなかない。蚯蚓は世の中で一番きれいなもんだ。奴あ、土を食って生きてる。だから、潰してみろ、土を吐き出すだけだ。わしだったら、食ってみせる。

両方とも、眠れない。にんじんは、寝返りを打つ。息がつまる。空気を捜す。

ある時は、葡萄蔓の束の上で寝ころび、空を見上げて柳の芽を吸うのである。

もう、ダニは仕事にかかり、皮膚を襲い出した。にんじんは指にちくちくと痛みを感じた。霙が降っているようだ。

余計な糞人情

猫は、からだを顫わし、生きていることを示す

やがて、彼の夢想は、砂を混えたか細い流れのように、勾配がなくなると、水溜りの形で、止まり、そして澱む。

心持は夜のように暗い。

腹がパンくずのような白さ

近視の、小さな狡そうな眼

羽根布団のぬくもりの下とか。

掛布団の下の暗闇の中

僕の愛情は純の純なるものだ

彼は、マルソオの朱色の頬を、いやというほど引っ掻きむしり、蜜柑のように皮をひんむいてやりたいほどだ

薔薇色の鼻先からライラック色の耳

清水の中へ葡萄酒をたらしたようにぱっと拡がる

彼は子供らしい物語に自ら興じ、ざっくばらんな打明け話や、いわゆる「心の想い出」というやつで、相手の眼を冴え返らしてしまう。やがて、相手の顔は、ほのかに、透き通るほど色づきはじめる。内側から照らされたようだ。

「またおいで。今のお金をおっことさないようにね。今度の日曜だよ、お天気がよかったら。それから、お前さんがまだこの世にいたらね。まったく、お前さんのいうとおりさ。誰が死んで誰が生きてるかわかるもんじゃない。誰でも苦労っていうものはあるし、神さまはみんなのものだからね!」

血管の中を、氷の塊りが、溶けながらぐるぐる廻っていた

誰もしゃべらない。「この人たちは一体どうしたんだろう」 アガアトは、そう思っている。 彼らはどうもしないのである。そういうふうなのだ。ただそれだけである。

彼女はしずしずと歩くなんていうことがほとんどできないのである。頬ぺたを真赤にし、呼吸をきらしているほうがいいらしい。

乞食っていうものは、あたしたちより仕合せなんだよ。

自分だけのために歌を唱う

ポマードで無理に寝かせつけられて、一時は死んだ真似をしているが、やがて、むくむくと起き上がる。どこがどう押されてか、てかてかの軽い鋳型に、ところどころ凸凹ができ、亀裂がはいり、ぱくりと口をあくのである。 藁葺尾根の氷が解けるようだ。 すると、間もなく、髪の毛の最初のひと束が、ぴんと空中に跳ね上がる、まっすぐに、自由に

にんじんの髪の毛なら、セメントでなくちゃだめだけど、あんたのなら、ポマードもいらないくらいだわ。ひとりで縮れて、ふっくらしてるわ。あんたの頭は、花キャベツみたいよ。この分けたとこだって、晩までそのまま持つわよ」

もしもルピック夫人が、息子や娘の前で、人間の屑みたいに取り扱われながら、すぐに食卓を離れずにいたら、それこそ彼は、屁でもしてやりたかったのだ。

にんじんはどうかというと、ぴりっとも身動きをせず、唇を壁土のように固くさせ、耳の奥がごろごろ鳴り、頬ぺたを焼林檎で膨らませながら、じっとしている。

「馬鹿おいい」と、彼女は、お愛想に喉を鳴らし、靴拭いを尻尾で叩いているピラムに向かっていうのである――「お前にはわからないんだよ、この家を持って行くのに、あたしがどんなに苦労してるか……。お前も、男の人たちみたいに、台所で使うものは、みんなただで手にはいると思ってるんだろう。バタが高くなろうと、卵が法外な値になろうと、そんなことはいっこう平気なんだろう

老人の皮膚にもりあがる血管のように

兎どもにはメロンの種をやり、自分は汁を飲む。それは、葡萄液のように甘い。

好き嫌いは、こうやって、人が勝手に決めてくれる。大体において、母親が好きなものだけを好きとしておかなければならない。

絶対の幸福に浸りながら

にんじんは、その時まず、一人でいることの快楽を味わうのだ。彼は暗闇の中でいろんなことを考えるのが好きである。

雨が窓ガラスを叩き、風が星を消してしまい、胡桃の木が牧場の中で暴れている

ちっとずうずうしい量見だ!

頑としていうことをきかない犬に業を煮やす。

ルピック一家はかんかんに怒る。

鷓鴣は痙攣したように、もがく。翼をばたばたさせる。羽根を飛ばす。金輪際くたばりそうにもない。彼は、友達の一人ぐらい、もっと楽に、それこそ片手で締め殺せるだろうに。――今度は両膝の間に挾んで、しっかり押え、赤くなったり、白くなったり、汗までかいて、なおも締めつづける。顔は、なんにも見ないように上を向いているのである。 鷓鴣は、頑強だ。

手にも、足にも、羽根が生えたように。

にんじん、お前いって鶏小舎を閉めておいで」 彼女は、こういう愛称で末っ子を呼んでいた。というのは、髪の毛が赤く、顔じゅうに雀斑があるからである。





名作のひとつだとも知らずに読んだ本なのですが、けっこうおもしろかったです。
家族にどれだけ馬鹿にされて苛められても、どこか冷めている主人公にんじん君はぼくからするとちょっと怖かった。
この小説の雰囲気はどこか乾いていて、現実感を感じない。そこがよかったです。
ハリーポッターが人間の家族(?)に苛められているシーンを読んでいて思い出しました。

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Hiro

Author:Hiro
読んだ本の記録。忘れたくない言葉。

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