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交友録より (室生 犀星)

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言葉が豊富で複雑で才分はわかわかしい、随筆は天下一品。

喜んでくれすぎるので行きにくい。

会ひにゆくと喜んでくれる。





なんでか母の親、つまりぼくの祖父母を思い出しました。
だって、会いにいくだけで喜んでくれるんだもの。
そんな暖かい人に、ぼくはいつかなれるんでしょうか。正直分からないのです。


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不思議な国の話 (室生 犀星)

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山の色は、うすい藍色のときもあり、鼠色だったり、あるいは一面に牛乳色をした靄の中から紫の頭をあらわしたり、ほんの雲の間にちょいと聳えてみえたりしていました。それを見るごとに、私はちょうど眩惑のするようなすうとした気もちで、その山の奥の方にある池のことを倦きることなく考え込んでいるのでした。

温かい白い雲がちぎれちぎれになって、山の頂へ、ふうわりと懸りました。まるで小さい帽子のように、ふしぎなまだ私の見たことのない国の上の秘密をつつむように、いく片となく浮きよせてきました。

私は、春になると何より杏の花の匂いをかぐのが楽しみです。

それほど話上手な姉のことゆえ、手で真似をして見せたり、美しい眉をしかめたり、または、わざとその大きい黒い瞳をいっぱい開いたりするのです。

私はすぐ山の上にある、空ばかり映っていて、すこしも濁ってない青い水底を考えました

山という不思議な、まだ私たちの見たことのない国

春は、いつの間にか紫ぐんだ優しい色でつつまれ、斑ら牛のように、残雪をところどころに染め、そしていつまでも静かに聳えているのです。





山への想いを綴っているのですが、確かに言われてみると山っていつも同じように見えるのですが、実はさまざまな変化がある不思議の国なのかもしれないと思ったのでありました。

山を見る目が少し変わりそうです。

庭をつくる人 (室生 犀星)

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好みは人間をつくるもの

寂しさにすぐれた人間の心もつき詰めてゆくと、石庭の精神でなければならぬ。わたくしは重い曇天の下で、蹲まり睨み合い、穏かにも優しいかれらの姿を一瞥したとき、すぐ或る種類の人々の心を覗き見た感じをもった。

水をやらない癖にして置けばそのまま苔になるのである。苔は肌のこまかいほどよいとしてあるが、山苔日苔の肌の荒いのは一層の荘重を感じさせるものである。総じて庭は石と苔との値が深ければよい

苔は日苔といい打水をしないでも蒼々としているのをわたくしは一番に好んでいる。山にある苔である。暑い日には乾いたままで蒼く、へいぜいは水をやらないで折々の雨を待つか或は一週一回ぐらいの水でよい。がっしりした苔である。大庭などはこの苔の方がよい。

飛石は丁々と畳んで行くいきで、庭の呼吸をつがせるようなものである。これの打ち方で庭ぬしの頭のほどが窺い知られるものである。飛石は何処まで打って行っても止まることを知らず、もう一枚、もう一枚というふうに先きを急ぐものであるから、止めをよほど抉り利かして置かなければならぬ。わたくしは飛石は庭を鎧うているものであることを熟々感じている。

石は二ツ接、三ツ組、五ツ組とか言い秘伝のようなものがあるそうであるが、わたくしは勝手に組めばいいと思っている。しかし物には釣合というものがある。その釣合以上の何ものかがわたくしたちを打ってくれればいいのである。一つ置いた石が物足りなさそうにしている態が見え、友ほしそうである。或いは寂寞に耐えない風姿をしている。それを見抜いてやることも我々の心である。何かかれらにも感情があり、一つきりで立てないときにはも一つ石を接ぐのもいいだろう。

石は庭ぬしの悲しい時は悲しそうな表情をして見せ、機嫌よいときはかれも闊達で快然としていた。

或いは夜来の雨じめりでぬれたのが、空明りを慕うているさまは恋のように仄かなものである。それが飛石であるときは踏みかねる心をもつ。朝の間は石の心も静まっていると見えるからである。

石は絶えず濡れざるべからずというのは、春早いころがその鋭さを余計に感じる時であるからであろう。水の溜まる石、溜まるほどもない微かな中くぼみのある石、そして打水でぬれた石は野卑でなまなましく、朝の旭のとどかぬ間の石の面の落着きの深さは譬えようもなく奥ゆかしい。

石が寂しい姿と色とを持っているから人間は好きになれるのだが、反対のものであったら誰も石好きにならないであろう。その底を掻きさぐって見たら石というものは飽かないものであるからである。さびは深く心は静かである。

わたくしは世に石ほど憂鬱なものはないと思うている。ああいう寂しいものを何故人間は愛で慕うのであるか。

程よい見馴染の快いものでなければならぬ。

つくばいの品格は最も秀れたものでなければならず、形は大きくも小さくもない、

兼六園の池のきわの手洗いは大石であるが、三抱えくらいの椎の大樹の根元にしっかりと置かれ、雄心を遣るに豪邁であった。わたくしはまだこれほどの大樹の根元に置かれた手洗いを見たことはない。

主としてつくばいは朝日のかげを早くに映すような位置で、決して午後や夕日を受けない方を調法とする。水は朝一度汲みかえ、すれすれに一杯に入れ、石全体を濡らすことは勿論である。その上、青く苔が訪れていなければならぬが、一塵を浮べず清くして置かなければならぬ。口嗽ぎ手を浄めるからである。

わたくしは蹲跼(石手洗い)というものを愛している。形のよい自然石に蜜柑型の底ひろがりの月がたの穴をうがった、茶人の愛する手洗石である。庭のすみに置くか、中潜りの枯木戸の近くに在るものだが、此のつくばいの位置は難しくも言われ、事実、まったくその位置次第で庭相が表われやすい

つくばい(手洗鉢)の水だけでもよいのである。乾いた庭へ這入ると息づまりがしてならぬ。わたくしたちが庭にそこばくの水を眺めることは、お茶を飲むと一しょの気持である。

水というものは生きているもので、どういう庭でも水のないところは息ぐるしい。庭にはすくなくとも一ところに水がほしい。






水が生きている、とは新しいモノの見方でした。

それにしても、日本の庭ってこんなにルールというか、深く掘り下げれば掘り下げるほどおもしろいんですね。
今まで単純にきれいだなぁ、なんて見てきたものが、こんなにもこと細かく計算されたものだなんて思いもしませんでした。

でも、庭が趣味とはいいものなんでしょうね、きっと。
あこがれます。

舌を噛み切った女 またはすて姫 (室生 犀星)

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色気たっぷりのこぼれる景色

時間を揉み潰していて

その二の腕は噛みつきたいほど、ふくれて白がこぼれた

こぼれるわかさ

お前は一日ずつ女になって行くばかりで、おれはそのわかさを趁っかけている





或る少女の死まで (室生 犀星)

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僕はあの子供の顔を見た瞬間、いきなり花のようなものを投げつけられたような気がしたのだ。

ふじ子の肖像で殆んどあのやさしい呼吸をしているかと思われるほど、底からな表情をくみ取って描かれていた。

私はこの金魚というものの、どこか病的な、虚偽な色彩のようなものを好まなかった。その娼婦のように長い尾や鰭に何かしら人間と共通な、わけても娼婦などと一しょなもののあるのが嫌いであった。ときには、汚なくさえ感じた。

「君は生活のらくな連中を見ると、どんな気がする。」「その存在はその人にとって運命だからね。羨望もなければ特別な愛もない。しかし、僕らのように貧しいものは決してあの連中に劣らないという自信を強くするね。」と私は答えた。

「そうだね。余りに清浄なものと、余りに涜れたものの相違は、ときとすると人間の隔離を遠くするね。」

あのふじ子さんという女の子を見ていると、僕らと人間の種類が異っているような気がするね。」

ぶしつけな、機械を取扱うような固い検事の物の言いかたも不快であった

おしろいがチョオクのように乾いていて、すこしもあぶら気のない顔であった。それは醜いといえば極端に醜くかった

彼女は明るいつやつやした目で私を見上げた。誰でも一度は、この子のように美しい透明な瞳をしている時期があるものだ。五つ六つころから十六、七時代までの目の美しさ、その澄みわたった透明さは、まるで、その精神のきれいさをそっくり現わしているものだ。すこしも他からそこなわれない美だ。内の内な生命のむき出しにされた輝きだ。

人はみな自分の内によくないものを持っている。

そして人間が大きくなると何という獣に近い兇暴になることであろうと感じたにちがいないと思った

ぐったりした餅のように乱次のないからだ

どこの家もみな深く睡り込んで、それがいかにも幸福な、私にかかわっていない平和な睡りであるように思われた。

私は烈しい後悔のために、自分の生涯を汚したような気がした

下駄のように粗雑な感じの男

こうした酒場にありがちな、だらしのない飲み仲間が得て出来るもの




貧しさが自信になるなんて昔は考えたことがなかった。もちろん人それぞれ考え方は違うのだけれど。
でも、貧しさが傍にいるともっと頑張ろうと思えるからありがたくもありますよね。


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Hiro

Author:Hiro
読んだ本の記録。忘れたくない言葉。

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