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画室の言葉 (藤島 武二)

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美術は永久に遺るものによって世の中を浄化するのである

結局最後まで遺るものは、作者の精神が強く輝いている作品である。何程表面が美しくても、エスプリのない作品は決して後世に遺ることができない。仮りに当時にあってそのエスプリが理解されなくとも、いつかは必ずそれが認められて後世に遺ってゆくのである。私は近頃この「永久に遺る」ということをしみじみ恐ろしいことだと考えている。

批評が生きた批評となるためには、借り物の知識を振り廻すだけでは駄目である。


自分の周囲の暗雲を払って、本当の自分を発見するということは、仏教などでもそれを最も大切なことに見ている。

懐疑と低徊からは何ものをも生み出し得ない。問題は虚心に純真に、物を正視することに尽きる。私は今の若い作家に、切にこのことを言って置きたいのである。

油絵の本質は、どこまでもどこまでも突っ込んで行くところにある。体力のすべてを動員し、研究のすべてを尽し、修正に修正を重ねて完璧なものにするのが油絵である。そしてそれがためには断じて中途で挫折することのない熱烈な意欲が必要なのである。

日本画の伝統について見れば、もちろん古人には幾多の優れた人がいるが、現代日本美術の水準は、日本画、洋画押しなべて世界第一流のものとは直ちに断定し得ないのである。いくら自分で世界一の美術だと称しても、押しの一手だけでは世界を承服せしむることはできない。皇軍の定評は、そこに儼たる実力が伴っているからであって、日本の美術が世界一になるためにはやはりそれだけの実力を持たなければならぬ。われわれはその押しを利かせるだけの実力を、すべからくわれわれ自身の手で把握しなければならないのである。

東洋画には東洋画の伝統があるように、油絵にはまた油絵の伝統的精神が厳存する。イタリアに始まりフランスが継承したラテン精神がそれである。油絵を描くにはやはりその伝統を見ることが大切である。日本精神だけでいくら油絵を描こうとしても、それは無理である。

画題の意を掬み、作者の気持と自分の気持を一つにして、始めて正しい読画ができるのである。

柿の実が成るまでにはいろいろと苦心を経ている、一見弱々しそうな枝であるが、苦労を経た枝であるから目白もよくそれを知っていて、自分の身を深く託し得られるのだ、という


私は絵を見る場合、常にこの気持をもってすることを忘れないようにしている。単に技巧の巧拙を見るばかりでなく、その絵を描いている人の態度とか、その絵のできる動機を見なければならぬと考えている。この点が何よりも大切なことであろうと信じているのである。

絵を見る場合、画面には先ず色彩があり、構図があり、線描があって、それが眼に入るのは当然であるが、それ以上に未だ奥があることを知っておかなければならぬ。テクニックの重要なことはもちろんであるが、これは狭い範囲の専門家がいうべきことであって、一般の人は必ずしもテクニックについて理解が深い必要はない。もちろんそれもあるに越したことはないが、その重要さを比較すれば、読画の精神は遥かにそれ以上である。

支那では昔から「読画」ということがいわれているが、これは非常にいい言葉だと思う。つまり絵は見るものであると同時に、その意味を読むものであるということである。即ち、絵のエスプリを理解して初めて正しい鑑賞がなり立つことをいっているのである。

絵画のエスプリというのは、即ち画面の裏にかくされている作者の気持を言うのである。作品には必ず作者のエスプリが現われておらねばならぬし、同時に見る人も作品を通じて作者のエスプリのない作品、エスプリを見得ない鑑賞は、共に皮相的なるものであるに過ぎない。 これはたとえていえば、人間の場合でも同じことである。いかに恰幅がよく容貌が魁偉であっても、その人にエスプリがなければ、真に威風堂々とは見られないであろうし、如何に器量がよくてもエスプリのない女は美人とは言い得ないわけである。姿態や顔貌は、絵でいえば画面の表面のことで、それを生かすものは結局人間のエスプリであるに外ならない。

したがって絵を見る場合、単に画面の表面だけを見るに止まっては、それは正しい鑑賞とは言い得ないと思う。






読画、という言葉が一番印象に残りました。たしかに、すごくいい言葉。
画の表面だけを見るのではなくて、画の中身を読み取ること。
人間の表面だけを見て判断するのではなくて、人間の中身まで外見から読み取ること。

大切にしたい言葉だと思いました。


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Hiro

Author:Hiro
読んだ本の記録。忘れたくない言葉。

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