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肉体のファンタジア : 小池真理子

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体の部位ごとの著者の考察。


・骨
 骨というのは不思議なもので、同じ死体でも、肉がたっぷりついていると怖いが、
 白骨化していれば、さほど怖くないという感じがする。
 人の肉体が無に帰すための、骨は最後の砦
 散骨するためには、あらかじめ骨を砕き、細かくしておかねばならない、という
 規則がある。
 骨はどこか、秘密めいてエロティック
 骨っぽさとエロティシズムとは相いれない、とする男は案外多い。女たちの間で
 命がけで行われるダイエットはいったい誰のためなのだろう。
 やはり男たちは一般的に、骨よりも肉、硬さよりも柔らかさを求める。
 埋もれてしまいそうになる豊かさを求める。
 肉が成熟の証である、とするなら、骨は成熟の拒否、退行、幼児化につながる。
 骨っぽい女を愛する男には、どこか少年愛、少女愛の匂いが漂う。

・指
 指は男女の別なく、その人を印象付ける決定的な一面を見せる
 食事、排泄、セックスにいたるまで、指はあらゆる生活の風景の中にあって、
 せわしなく動き続ける。それでいて、どこか慎ましい。

・歯
 口の中は自分のものとわかっていながら、どこかしら神秘的である
 歯はときに、性的なものの象徴になったりもする。口もとと歯並びが異性の魅力を
 最終的に決定する、と考えている人が案外多い。極端な八重歯や、反っ歯気味の
 前歯といった歯に性的なものを感じる、という人は意外にも多いのである。

・顔
 人の顔というのはどこか一箇所、わずかミリ単位以下で動かしたり、大きくしたり
 小さくしたりするだけで、かくも印象が変わるものなのか、ということ
 美醜の差というものは、実は、それを見る側の価値観が生み出すのだ
 美を前にひれ伏すのは、美を美として認めた人だけなのだ。

・乳房
 女である、ということを乳房ほど露骨に証明してくれるものが他にあるだろうか
 フロイトによれば、母親の乳首を吸う、という赤ん坊の行為は、人間がこの世に
 生をうけて初めて知る快感なのだそう

・唇
 亡くなった人のやわらかな唇が板のように硬くなり、二度と動かなくなるばかりか
 その奥に漆黒の闇をたたえる、というのは不思議。
 今更言うまでもないが、唇はヒトにしか具わっていない。外部に向かって唯一露出
 した、あるいは露出することを許された粘膜状の皮膚の一部。
 かつて日本では接吻のことを口吸いといった。合わせるだけでなく吸い合うという
 のはなんとも日本人らしい表現
 一度目のキスは拙いものでなければならず、巧みなキス、甘いキスは2度目から
 でなければならない

・毛
 体毛はある意味で、その人の生命力を象徴する。赤ん坊は別にして、
 老人で毛深い人、髪の毛の多さに悩む人を見かけないのも道理だろう。
 遺伝や体質の関係で禿げていく頭は別にして、年齢や病気とともに次第に勢いを
 失くし、等しく衰えていく体毛を見ていると、生命の不思議を覚える。
 ヒトも動物も、命は一本一本の毛先にまで宿っているのだ

・目
 仲のいい夫婦は決まって鏡に映った自分自身を見るような目で、伴侶を見る。
 殆ど全てのカップルがそうである。
 それにしても、異性の、とりわけ何とはなしに意識している人の目が、
 じっと自分を見つめた瞬間というものを何故、私たちは長い間、忘れることが
 できないのだろう

・贅肉
 適度な贅肉は、健康と豊かさの象徴であった

・臀
 臀は「おいど」などとも言うらしい。風情がある。
 それにしても、男が女を見るときに、まずどこを見るか、という質問に対し、
 1顔 2胸 3臀 という順になる
のは、番狂わせが生じるにせよ、不変の事実
 言わずもがな、の話だが、臀はどうして桃の形をしているのか、というと、その
 割れ目の奥に肛門が控えているから。人は排泄時、桃を割るようにして臀部を
 広げ、肛門を露出させる必要がある。
 動物にも臀があるという事実

・背中
 女は、男が想像する以上に、男の背中に魅力を感じる生き物である。
 女はふつう、「強いものに守られている」という状態を本能的にこよなく愛する

・声
 電話を利用した性戯(テレフォンセックス)は、もはや現代人にとって珍しい遊び
 ではなくなってしまったが、カラオケもまた、声がどこかしら性的な回路を辿って
 居合せた人に伝わってく、という意味で言えば、限りなく性戯に近いところが
 あるのではないだろうか

・皮膚
 皮膚の潤いというのが、とりわけ女の場合、性的な潤いとして感じられ、捉えられる
 のは面白いものだ。やはり手の湿り気というのは、女性性の隠された要であるような
 気がする
 男は普通、「素」のままで年齢を重ねていく。最近でこそ、若者が洗顔後、顔の
 手入れをするようになったようだが、ボディケアまでしている人は希少だろう。
 そんな中「加齢臭」という、人を小馬鹿にしたような言葉が生み出され、年配者
 独特の臭気を消すためのものが製品化された。ここまでくると世も末。
 そんなものを製品化して売れると信じている企業の愚鈍さに、言葉も出ない。
 臭気と受け取るのか、生き物として誇るべき匂いと受け取るのか、受け取り方に
 よって、その人間の深みがわかろうというもの。加齢臭という言葉のはらむ
 底知れぬ虚しさ。

・鼻
 性的俗説のひとつに「ペニスと鼻の相関関係」がある。男の鼻は、その人の勃起時
 のペニスの太さ、長さ、形と相似形を成している、というもの。
 人の鼻は、顔を構成するあらゆるパーツの中で、唯一隆起している。
 鼻がなければ人の顔はのっぺりとした平面体に過ぎなくなり、鼻の高さ低さによって、
 その人の顔立ち、個性が決定してしまうのも、なるほどと頷ける。
 もともとわが国の女たちの間には、必要以上に「オス」であることを誇示されるのを
 嫌う風潮が根強くあった。存在そのものがオスであるような、巨大さや強さを連想
 させる男よりも、限りなくユニセックスな、美しい、清潔感あふれる男が全般的に
 好まれるようになっていて、性的に未熟な国民だったのが、ここにきていっそう、
 その未熟さ、幼稚さの度合いを増しつつある、と言ってもいい。

・舌
 舐めたり吸ったり味わったりすることの中には、確かに原始的なエロスの感覚が
 潜んでいる。
 甘いものを食べる男には、どこか人を安心させる人間くささ、ものごとに対する
 柔軟性が感じられる。

・臍(へそ)
 それにしても、へその緒を後生大事に桐の小箱に納めて母親に手渡す習慣、
 というのは考えてみれば面白い。

・子宮
 頭では理解できても、よくもまあ、病気でもないのに毎月一回、数日間にわたって
 股の間から血を流しながら生きていけるものだ、と彼らは内心、恐れおののいている。
 私は初潮をみたときの不安と恐怖を今も忘れていない。なんてキモチの悪いことが
 女の体には起こるだろうという記憶。
 子宮が女の人生そのもの、という発想はたいそう正しく、同時に、エロティック。
 
・解説より
 写真というものは、撮った瞬間に過去のものになる。
 「美」というものは、感覚の積み重ね










内容は、柳美里さんの「男」に似ているな、と思った。
(過去の記事はこちら↓)
http://forbookbloghiro.blog.fc2.com/blog-category-23.html




一番面白く感じたのは、体毛。
確かに生命力の象徴である。
老いた人を見ても、髪に元気がある(禿げることを抜きにして)人は、やはり若々しい印象を受けるし、
髪にツヤがあると自然と顔が明るく見えるものだと、改めて思った。






解説の写真家さんの言葉が印象的だった。

「写真というものは、撮った瞬間に過去のものになる。」
「「美」というものは、感覚の積み重ね」


ごもっともである。




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Hiro

Author:Hiro
読んだ本の記録。忘れたくない言葉。

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